モナリザ
８、モナリザ
けれども、ここでちょっと考えてみたい。 先の辛抱が足りず「直ぐ離職（ りしょく）した」男女二人の若者（Ａ）と、半泣きの夫を蹴飛ばして「直ぐ離婚した」３０代の「バツイチ子持ち女」（Ｂ）の間に何か共通点が有りはしないか？ 実は大ありで、Ａ＝Ｂなのだ。 即ち、若者とは（昔に比べて）直ぐ離職（ りしょく）し易く、直ぐ離婚し易い。
だから、「やっぱり今の若いのはダメ！」かって？ いやあ、未だ少し違う。
先の、夫を蹴飛ばして離婚した「バツイチ子持昆布」には、小学五年の娘が一人いる。無論私の子ではないが、胸が少し膨らみ掛ける年頃。ある時、私が昨今の性風紀の乱れを嘆いた処、この女はビクともしなかった。それどころか、自分の娘が中学生になったらこう教えると言う：「もし好きな男の子が出来たら、コソコソ不潔な処でヤラず、家に呼んでヤリなさい」
中学生に「ヤリなさい」だなんて、ボクシングをやるみたいな奨励策に、流石の私も度肝を抜かれた。
呑みこみの悪いそんな私を眺めて、「発育の良い子なら小学５－６年からでもーーー」と言いかけた言葉を、バツイチ女はぐっと呑み込んだ。この時にニタリと見せた微笑は、モナリザに似ている。モナリザに弱い私はひょっとしたら「女が正しくて、間違っているのは自分かもーーー」、という気がした。
考えて見ると、今でもやたら数が多いとは思えないが、早熟な中学生や高校生の男女が、服を脱いで愛し合うのが何故いけないか、である。同じ歳頃に、昔自分がそうしなかったからだという理論かな？ でも、この理論は弱い。それとも、彼らが勉強しなくなるからと言うなら、ポケモン・ゴーの遊びとの整合性はどうなる。前者は不健全で、後者は健康的？ 大人になるまでセックスに対する我慢を教えるため？ それなら、誰か我慢の効果を実験で確かめたのか？
実をいうと、私にも良く分からない。
大人になって、セックスという秘密の花園の扉を初めて開ける時の、淫靡な期待感と異性へのワクワクする夢を、低年齢化によって味も素っ気も失くしてしまう、だからいけないという人もいる。 一理はある。
けれども、これは「昔は良かった」という年配者の郷愁である場合が多い。中・高生は好奇心と情熱に満ちて、特に男の子は電信柱にでも絡みつきたい悩ましい年頃。彼らガキどもに、まるで高僧の戒律みたいに厳しい禁欲を無理強いするのに、果たして無理がないかである。
