◎第十九話: 「めっちゃ、面白い!」 の話
第十九話:「めっちゃ、面白い!」 の話
1.新卒の採用
ウチでも時々人事募集をする。
中高年の、いわゆる「お父ちゃん」に相当するような歳の人を中途採用で面接する時もある。こんな時は厳しく実力を評価し、容赦なくダメなのを振るい落とすのが、ウチの基本。こっちとしても、シッカリしたいい人が欲しいのだから当たり前。面接の口頭試問で、相手がなよついた返事でも返したら、ひと睨みして叱り飛ばし、説教でもしかねない勢いになる。あおりを食った相手は「この会社は鬼か蛇か!」と思うに違いない。
反対に、新卒者を面接する場合には、私の心配りは春みたいにほのぼのと温かい。「育てよう」という、損得を抜きにした人生の先輩としての気持ちがある。若い人を「成功させてやりたい、頑張りなさいよ」という気持ちも混じる。どこから眺めても、イエスキリストみたいな優しさで「鬼か蛇か!」には見えないから、自慢じゃないが、私は器用な二重人格者なのだ。
ウチは働き易い会社だ、と自分ではそう思っている。年間休日は大企業の平均より多いし、残業は皆無に近い。社内研修は男女共学でさわやかな触れ合いも自由、平日でも毎日三時にオヤツが出るし、適当に食事会があり、慰安会もあってあれやこれやの全額が会社負担。
しかも社長の前でアクビをしても危害を加えられる事はめったにないと来るから、ウチの社員に限って天国は「死後の世界」ではない。にも拘わらず何を隠そう、新卒の採用でウチはドジってばかりいる。