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第六百十二:泰子さんの話(509) ★同い年の女(5)

第六百十二:泰子さんの話(509) ★同い年の女(5)


 夫は夫でU子の言い分を認めつつも、「世間並み以上に出世し豊かな経済で、家族を養ってやった」と言う「威張りたい」自負の気持ちが濃厚だ。男なら、これも正論であろう。中年時代に酷い失業をして配偶者に頭が上がらなかった経験のあるこっちとしては、U子の夫の気持ちが大いに分かる気がする。


 更に夫は言い分として、「お前が僕を好きだ好きだ」と言ったから「結婚してやったんだ!」と、100年前の昔話を真面目顔で持ち出すのも尋常ではない。普通なら冗談で持ち出す。


 というのも、他方で又引け目があるらしい。夫の家は元々貧しかったので、夜間大学に行くのにU子の親から学資を援助して貰った経緯があったらしい。昨今はやりの援助交際とは違うが、こんなんだったから、夫の出世振りは水呑み百姓から天下人に出世した秀吉に似て努力は偉い訳だが、U子に対して弱みがあるのも確かだ。仕返しに「結婚してやった!」と言うのだが、これがまた火に油を注ぐってやつだ。


 二人の間にそんなすれ違いがあったとしても、世間一般では些細な(犬も食わない)「痴話げんか」の範囲で、漬かり過ぎた漬物みたにどうでもいいようものだ。が、あにはからんや当人同士の間では、これが生きるか死ぬか真剣勝負で、一歩も譲れない重大な問題であるらしい。二人の、ここがヘンなのだ。


つづく


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