第六百四:泰子さんの話(501) ★発明の話(5)
第六百四:泰子さんの話(501) ★発明の話(5)
私は疑問を持った:市販の全く同じワシャを使っておりながら、どうしてナットと一緒にワシャが「連れ回る時」と「連れ回らない時」が起きるのかと疑った。こんな言葉をご存じだろうか:「正しく提起された問題には、既に解答の半分が含まれているものだ。」 私は半分の解答と残り半分の解答を追求する事にした。殺人事件を追うベテラン刑事みたいなものだ。スリラー小説が好きな人は、刑事か発明家になるとよい。
ワシャは安いものだから、1~3mm厚さの薄い鉄板をプレスで丸く打ち抜いて、何百・何万個と大量生産で作られている。それぞれ同じで製品に形の違いや個性は無かった。それぞれのワシャの表面を詳細に眺めたが、差異は見つからなかった。
全く同じものだのに、どうして機能に違いが起きるのか? そんな筈はないと思い、連れ回らなかったワシャばかりを集めて、老眼鏡をかけ替えて更によくよく凝視した処、ワシャの表面に僅かな毛ほどの突起を発見したのである: ワシャの裏面(=床に接触する側)に、プレスで抜いた時に出来る微細なダレ(=カエリやバリとも言う)気づいた。後から考えて、この発見こそが運命の星の輝いた瞬間であった。
そうだ、ワシャの裏面にバリを付ければ良いのだ!
つづく




