第六百三:泰子さんの話(500) ★発明の話(4)
第六百三:泰子さんの話(500) ★発明の話(4)
次に発明のもう一つの手法がある:
ナットを回して締め付けると、座面(=床面)に大なり小なりこすり傷が付く。塗装した床面なら、塗装が剥げてしまう。これは当たり前。普通は少々くらいなら床面に傷が付いても許容される。けれどもある時、社内で非常にデリケートなボルトの締付け実験をやらなければならなくなり、ナットによって床面にこすり傷を絶対に付けたくなかったのである。
解決方法として、ナットと床の間に丸い市販のワシャを入れた。これで床面に傷が付かず解決した。なぜなら、ナットはワシャの表面を擦るからワシャ表面に大きな傷は付くが床には一切付かない訳だ。しかし、「解決した!」と喜んだのは束の間。
確かにこれで問題の70%は解決した。が、残り30%は解決しなかったのだ。解決しなかった30%は、ナットを回して締め付けると、「ナットと一緒にワシャが連れ回った」からだ。あにはからんや、こうなるとワシャが床を擦るから床面に傷が付いたのである。
言い換えれば、同じ市販のワシャを使っていながら:ナットを締め付けた時にワシャが連れ回らない時(70%)と一緒に連れ回る時(30%)があるのだ。なお、一度締付けに使用したワシャは使い回しをせず、実験の都度新しいものと取り換えてやっていた。ワシャなど安いものだったから。
つづく




