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第五百六十七:泰子さんの話(464) ★社歴(5)

第五百六十七:泰子さんの話(464) ★社歴(5)


 私の首が掛かりながらも、すったもんだの末それら障害を勇ましく乗り越えて、自分の考えを押し通した。英雄的である。

 兎にも角にもレンタルの政策は画期的な成功に繋がった。成功したのは、積み上がった倉庫のウチ側の事情だけでなく、バブルを境に「買うより借りるもの」と、顧客の側の意識にも変化が起きていたのだ。この市場の構造的な変化に誰も気付かず、ウチだけが気づいた結果になった。


 と書いたが、物の見方は多面的で、実はウチが「顧客の保守的な意識を(そのように「借りるもの」と)変化させた」仕掛け人だったとも言える。ここが商売の面白さで、今までに無かった新たなマーケットを自らの手で全国的に創り出した結果になった。

 これは後付けでそう言える訳で、当時の私はそんな大袈裟な意識は1%も無く、レンタルという安い金額の注文であっても日々の注文を欲しかっただけである。


 但し、やるとなるとパラノイア流儀で徹底した。顧客の意識を変えるために「買うより借りろ!」のキャッチコピーを大書した特注のカタログを作り、レンタル価格も全公開(当時の業界ではあり得なかったが)して、みみっちい小細工をしなかった。大量のDM発送もやった。


 やり過ぎて、ある客からDMが来過ぎだとして電話で苦情が来た。けれども苦情を無視してその後も送り続けた。彼は、嫌な会社だーーーと怒って恨んでウチの会社を「生涯忘れない」であろう、とこっちは考えた。これこそベストな宣伝だとほくそ笑んだから、実に始末が悪い。


 ついには、ある日別の顧客から「へえっ、お宅の会社は(製品のレンタルの外に)販売もやってるんですか!?」と言われた事があった。本末転倒なこの言葉を聞いた時、作戦が頂点に達したと知り「やったあ!」と内心で躍り上がったものである。これがパラノイアなのである。


 因みにそれから30年が経った今では、レンタル事業による収益が会社全体の利益の70%以上を占めるまでになっている。結果的に当たった訳だ。


つづく


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