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第五百六十一:泰子さんの話(458) ★俳句作り(5)

第五百六十一:泰子さんの話(458) ★俳句作り(5)


・お早うと 男のポツリポツリと座りしが いと涼しき施設の夏の食卓   (泰子)


 ★施設には当然単身男性の入居者もいる。奥さんに先立たれたか。その人たちは仲間を作らず群れず話をせず、何故か何時も独りぼっちだと泰子さんは言う。食堂でそれぞれ離れて座って一人づつ黙々と食事をしている。朝・昼・夕と同じ人が決まったテーブルに座る。やっぱり男という生き物は、群れないから難しい。対して、泰子さんを含めて女達は大抵女同士二人組で座っている、との事だ。


 男達はみな不思議に決まってパン食でなく、三度三度ご飯に味噌汁だと泰子さんは教えてくれた。句は「涼しき夏の食卓」としたが、本当の処は「淋しき夏の食卓」と書きたかった。身の周りの涼しさと淋しさは、よく似ている。涼しさは「隙間」風なのであろう。


・薬師院 この盆が最後かお祖母かあさん 手を合わす (泰子)


  ★岡山市にある泰子さんの実家の菩提寺へ、次の日曜日に一緒に二人でお参りする予定にしている。お盆の混雑を避けて、泰子さんには生涯最後のお参りの積りである。お供えの花を用意しようかと私が気を利かせれば、「要らん!数珠だけ持って来なさい」と締めくくられた。


・またこぼす ソレヤレ逃がすな 施設のそうめん流し(K女:85歳)


  ★基本的に泰子さんは自室のキッチンでは食事を作らず、三度三度施設の食堂で食べる。同じテーブルで一緒に食べるK女85は、軽い脳梗塞を患った事があり、手が震えて食事中によくこぼす。毎回一緒に食べる泰子さんが、手厳しく叱る。

 なお、K女は単独での施設からの脱出は、安全の為に禁じられており、言わば軟禁されている。だから私は泰子さんと一緒の外食に誘う訳には行かない。誘拐罪になり国際手配される。


・夏が来て カーテン買い足す 独り部屋 (泰子)


  ★施設への入居は今年の春であったが、うっとうしいとの事で泰子さんは窓のカーテンを半分の長さ分しか、取付けなかった。なお、カーテンは自己負担である。半分の長さは確かにヘンだと思ったが、私は反対しなかった。

 夏になって、「まぶしいじゃないか!ヒロシ」といって、私のせいにした。


つづく


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