第五百四十:泰子さんの話(437) ★父と私(4)
第五百四十:泰子さんの話(437) ★父と私(4)
泰子さんの夫婦も、典型的にそうだった。夫は起業家として華々しく成功したのだけれども。二人は恋愛結婚で折角好きで結婚した筈なんだから「夫婦としてもっとベタベタしてもよかった」と感じる。元来私自身が「女好き」かも知れないが、それと「夫婦である事」を一緒に親しむのとは、少し次元が違うと思う。
私は、自宅に帰るのが毎日何となく楽しみである。配偶者に会えると思うからで、今の歳でも多少の胸のときめきがある。これは結婚前の恋人同士だった時代とあまり変わらない。こんな風なのは同輩の平均的な夫婦とは少し違うようだから、私は人生を少しロマンチックに観ているのだろかーーー。
対して父の日誌を読む限り、「母に会う」のを楽しみにしていた風ではない。今日は役所が早くひけたから、早めに帰って母と自宅の近所を一緒に散策して親しもうーーー、とは考えなかったようだ。むしろ帰宅途中に(新開地駅などで)下車して行き付けの喫茶店に寄って、時間つぶしするという記述が日誌の「随所に」見える。私は随分と違和感を感じて、(母の為にも)肯定し難いのである。
お仕舞い




