第五百二十九:泰子さんの話(426) ★やりにくい話(9)
第五百二十九:泰子さんの話(426) ★やりにくい話(9)
外にも例えば、ウチが頼んでいる税理士が居る。毎月一度定期に来訪して私と話をよくする。多少とも経営知識がある専門家であるのに、ウチの経営のノウハウについて何ほども分かってはいない。隠す積りもないのに、知ろうともしない。
ノウハウの一部分でも真に理解すれば、仕入れた値打ちものの知識を元手に業績が不振な他社へコンサルタント出来るビジネスチャンスがある筈と思う。が、そんな欲もなさそうだから端から無理な話で、ウチという宝の山に出入りしながら何が宝かさえ気付かない。なに彼が特別ではないから、批判するほどではない。取引があってウチへ出入りする大抵の人が、そのようだ。
名経営者と持ち上げてくれるのを嬉しくないという訳ではないが、苦労して考え出したり習得したものだから、このノウハウを人に上手く伝授出来ない事に、一抹の淋しさを覚える。後継の経営者には頑張って欲しいと思う以外に、教えようがない。悩みといえば、これが私の悩みかもしれない。
ウチのような小さな会社の経営は「自分一代限り」かと思う事がよくある。私が引退すれば、或いは死ねば全く「別物の会社が新しく一つ生まれる」と考えた方がよい。別物の会社になっても、競争の社会で潰れないでやって行って欲しいと心から願っている。
お仕舞い




