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第五百九:泰子さんの話(406) ★負け惜しみの話
第五百九:泰子さんの話(406) ★負け惜しみの話
「恐らくはただ一人なる読者として父の遺せし日記読むなり」(吉村一)を、今も私は継続している。以下は、昭和56年4月(父が70歳の時)父が書き遺した記述である。
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負けた人とか成功出来なかった人が、失敗の理由をあれこれ言い訳して、原因が自分ではなく他のせいにする場合がある。これを未練がましく聞かされるのは、不愉快なものだ。負けは負けでグチるのは男らしくないと、若い頃から思い定めて私は生きて来た。
そんな風に他人へはグチらないが、実は書き留めておきたい「負け惜しみ」が私にはある。と言っても、他人のせいではないし不愉快な事でもないし、又悔しいと思っている訳でもない。ただ誰かに知って貰いたいという未練みたいなもので、その思いを話す人がこの世に誰一人居ないのが何となく心淋しいのである。
つづく




