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第五百五:泰子さんの話(402) ★本箱の話(2)
第五百五:泰子さんの話(402) ★本箱の話(2)
再読しない理由の一つは、同じ映画を二度観たくないのと同じだ。加えて、昔の本は現代よりも字が小さかったから、仮に再読したくても50も過ぎれば鼻へ落ちかかる老眼鏡には適しない。再読したければ、活字が大きな本を再度購入すればよいと考えた。本を気軽に買えるだけの、多少とも経済力が付いたせいもあった。
処分する本はどこかへ寄贈しても良かったが、わざわざ寄贈する程の分量でもなかった。文庫本など重さが軽い本は捨てたし、重みがあるのは人に上げた。読書が好きな友達である「子持ち昆布の女」にも沢山進呈したから、当人の元々幾分か自信を持って居た知性が一層磨かれたはずだ。その手を経由して古本屋へ流れた本も多かろう。
処分するとその本が昔あった事を忘れ、再度同じ本を購入し、そして再度読む事も起きた。一見無駄な事をしたようだが、それでよいと思っている。内容を忘れたのならもう一度勉強すればよい事で、人生の中で本代の損だ得だと悔しがるほどの事でもあるまい。
つづく




