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第五百一:泰子さんの話(398) ★父の日記から(その8)クリスマスの話(2)

第五百一:泰子さんの話(398) ★父の日記から(その8)クリスマスの話(2)


 神戸から大阪特別調達局へ転任して間もない頃だった。米国との講和条約が発効する直前で、米軍による占領がいよいよ終了する事となりその終了手続きの業務に追われていた。


 基地対策課長として住民対策や手の掛かる交渉事や、役所内ではそれらへの対応に苦慮する課員たちへの気配りもせねばならなかった。国家的に重要な仕事をやっている強い自負があったけれども、精神的にいら立つ事も多い日々だった。住民だろうが課員だろうが、誰構わず相手を殴りつけたいと思った事もしばしばだった。


 自宅に帰れば、夕食中もその後も、ただただ妻から家計の苦しさとグチを延々と聞かされていた。外では難しい業務に忙殺されながら、隠れた内の事情では小さな子供4人を抱えた家計の苦しさに泣かされた。生活を仕切る妻の顔も不機嫌になり勝ちで、一家の長として来る日も来る日も私はやりきれない思いをしていた。


 課長であった私の家計でさえそうだったから、課員たちの生活はもっと苦しかった筈だ。俸給を上げて貰う為のストライキ権を国家公務員には許されてなかった。思えば私が仕事でいら立っていたのは、仕事と低すぎる俸給のアンバランスへの不満もあったからでもあろう。

    

 時期を同じくして当時朝鮮戦争が勃発し、これが為に先の通り神武景気に世間は湧いて、民間の所得水準は目に見えて上がっていた。その目的でストも頻発し、私鉄や私バスも例外ではなかった。けれども国家公務員の薄給だけが離れ小島のように取り残され続けていた。街にあふれるジングルベルは所得を膨らませた人達の別世界のようで、寂しい思いを募らせた。


つづく


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