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第四百九十九:泰子さんの話(396) ★充実した人間関係’(2)

第四百九十九:泰子さんの話(396) ★充実した人間関係’(2)


 私がもっと歳を取って仮に配偶者を亡くし「独りになった」場合、そうなっても息子達やそのお嫁さんや孫たちが家族として周りには存在する。けれども、ひょっとしたら「私も」泰子さんみたいなタイプかもしれないという気がしている: 迷惑を掛けたくない・気を遣って欲しくないと考えている。一人にしてくれと言うならば、「(泰子さんと同じように)お爺ちゃんは変わり者」と私は見られるだろうか。


 となれば、私の顔を観るよりも、「巨人阪神戦」に熱中する今の泰子さんは、「正しい選択」をしているという事になりそうだ。人間関係を「充実させる」というのは、誰にでも通用する一見立派な考え方に見える。けれども、セックスが肉体的に出来なくなるのと同じように、老人には必ずしも正しくないのかも知れない。何故なら、求めても「実現が出来ない」からのように思える。


 若い時は親しい友達や先輩や彼女や心の許せる配偶者が身の周りにいて、関係を充実させることは可能で、ある意味で容易ではある。けれども歳が入って周りを見渡した時、そんな人たちがもう物理的に「存在しない」となれば、人間関係を一体誰と充実させればよいだろうか? 


 周りは自分より若い世代ばかりで、食べ物の好みだけでなく、話題も考え方も生きた時代も体験もまるで違う。周りは火星人だらけみたいなものだ。こんな中で「人間関係の充実を図れ!? 笑わせるない!」と泰子さんなら言いそうだ。


 私は泰子さんの恋人ではないし、泰子さんは私の母親でもない。考えてみれば、週一でお昼を一緒に食べるだけで情を通わせたいと思うのは、考えが浅い。老境の彼女の為に若い人が何か出来ると思う方がおこがましく、逆に言えば、実は周りからは何もして上げられないものだという気がする。その孤独は誰も埋め合わせが出来ず、切ないものだ。周りはただ見守るしかない。


 泰子さんは、野球観戦という今やるべき事に集中する生き方を選んでいる。正しいと思う。

「白寿とはふとおそろしくふと涼し」(白川良)の句を新聞で見つけた。※白寿99歳


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