第四百九十八:泰子さんの話(395) ★充実した人間関係
第四百九十八:泰子さんの話(395) ★充実した人間関係
「人間関係の充実」が人生の豊かさの土壌となるのは確かと思う。友人は必ずしも多くある必要はないと思うが、心を許せる人が身近にいるのは大切だ。友人に当る人が配偶者であっても充分に良い。またセックスは人間関係の充実に手っ取り早い手段だとも思っている。その意味でこれも大切である。
私が考えるのと同じように、96の泰子さんが「人間関係の充実」に重きを置いているかどうか、しかとは分からない。お世話していると言う程ではないが、私は週に一度は介護施設内から泰子さんを連れ出してお昼を一緒に食べる。これに泰子さんが「感謝して大喜びしているか」となると、疑わしい。
食事が終わるや否や「さあ、ヒロシ、(食事が済んだから)帰ろう!」と、追い立てるように毎回泰子さんは私へ促し、腰を浮かしかける。そう言われて、何となく釈然とせず情が無いように感じる時がある。自室(=「ドマーニ神戸」の施設内)へ戻り13時30分から始まる野球中継を見たい為らしいが、私とデートするより野球が優先である。
「(泰子さんが)独りで、心寂しかろうーーー」と気遣うのは、どうやら私のおせっかいかという気がする。それとも96なのに寂しさを感じない泰子さんのほうが、無神経過ぎるのか。どっちがまともなのかと、不審を抱くのである。
つづく




