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第四百七十:泰子さんの話(367) ★父の日記から(その3)本箱の思い出(5)
第四百七十:泰子さんの話(367) ★父の日記から(その3)本箱の思い出(5)
文学に熱中出来るFの身分を羨ましく思ったが、同時にFから感化されて本を読むことが好きになり、たとえ(家が貧しく)上級学校へ進学出来なくても、本を読む事だけは生涯続けられるのだからと、自らを慰めていた。
それからのFとの交流はどうだったかの記憶は定かではないが、中学校の5年を終えて彼は姫路高等学校の文学部へ進学した。私の方では家(=小さな文房具屋を営んでいた)の商売を手伝ったり、近所の洋服屋の息子の勉強を見てやったりしたことがある。夜には自分なりに何かしら勉強していた。
この間に何度かFと手紙をやり取りしていたが、やがて数年遅れて私も京都へ出る事になって、「大徳寺の書生」の身分となった。お寺の掃除をしたり走り使いだったが生活環境が変わってそれなりに忙しく、何時とはなしにFとの交流も無くなってしまった。
そんなある夜、与えられていた寺の三畳ほどの間で寝ていて夢を見た。
つづく