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第四百六十九:泰子さんの話(366) ★父の日記から(その3)本箱の思い出(4)

第四百六十九:泰子さんの話(366) ★父の日記から(その3)本箱の思い出(4)


 当時の文壇は新興芸術派というのと、当時は非合法であった共産主義思想の所謂プロレタリア派が興り始めた頃だった。炭鉱労働者や東北の悲惨な農村を描いた本や、北海の「蟹工船」の小説などがあった。けれども当局の検閲が厳しかったせいか伏字が多くて、意味の分からない物が多かった。


 Fは毎月「中央公論」や「改造」の文学雑誌が発行されるのを待って買っていた。彼が読み終わるのを待って、私も読ませて貰った。二人とも当時の所謂大衆小説というものには見向きもせず、口にするのさえ恥ずかしい低俗なものと考えていたのである。いっぱしの文学少年になって、突っ張っていた。


 その癖おかしな事に、当時読んで今の歳になってもちゃんと記憶に残っているのは、レマルクの「西部戦線異常なし」やパールバックの「大地」や長塚節の「土」など、純文学というよりどちらかと言えば大衆小説的なものばかりなのは、一体どうした訳かと思う。当時の純文学というのは、少年時代に感染する一種の熱病だったのだろう。今思い返して、可笑しい。


つづく

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