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第四百五十六:泰子さんの話(353) 飛行神社の話(父の手帳から)(9)
第四百五十六:泰子さんの話(353) 飛行神社の話(父の手帳から)(9)
今も覚えている会話は:
「僕も、もう40近くになりましたよ」
「まあ、そうですか。けれども、まだまだこれからが働き盛りじゃありませんか」
生きる生活も世界も違ったから、互いに何か話すべき話題も無かった。長居をすることなく辞去して帰った。
当時は月給が安く家計が一番苦しい時代であったが、女の哀れ思って無理をした。自分の小遣いの殆ど全額を払って、そのころ不足していた綿製品のパジャマを一枚買い求め、送った。後日勤務先の役所へ丁寧な礼状が届いた:
「頂戴したパジャマの襟に顔を埋めて毎夜寝ております」、とあった。
「顔を埋めてーーー」の言い方が、また哀れをさそった。
つづく




