第四百十九:泰子さんの話(316) 過去を捨てる(3)
第四百十九:泰子さんの話(316) 過去を捨てる(3)
泰子さんの思考はBさんが出来たのだから、Aさんは古い物であり不要と考えてお払い箱にするのだ。泰子さんの中では、友達の数は(例えば最大3名)と定員制を取っていて、新しく一人増えたら古い一人を減らして(本人の言い方をすれば)バランスを取り、何時も3名を維持しようと努めるのである。ルール化していて、泰子さんに言わせれば、「俳句会に入会して知り合いが増えて付き合いに忙しくなりそうじゃ、だから(古い友達の)Aさんに何時までも拘っている訳に行かんのじゃ、なあヒロシ」と言い訳した。
しかし、ここが泰子さんのいい処で、Aさんをお払い箱にするに付いて、不義理は決してしない。例えば何かお別れの品物を上げるとか最後に食事に誘ったりする。それが終わると、自分の義務をやっと終了した、やれやれだと判断するのだ。サバサバしていて、懐かしむ風でもなく、また会いたいとかは思わない。私から見れば何か情が無さ過ぎると感じるが、泰子さん本人はそれを少しも寂しく感じている風ではない。
泰子さんは友達が5人になったり、ある時は10人になったりと変化する「数のいい加減さ」が嫌いなのだ。数は正確にキッチリ3でなくてはならない。歳が入ったから沢山な人と付き合うのに気疲れするからではなく、若い時分からこのルールを厳格に踏襲している。決めている事以外をやる「いい加減さ・曖昧さ・融通性」に耐えられないのだ。また情に絡んでベタベタするのが嫌いで、数学のようにきっちりする。
つづく




