第四百十五:泰子さんの話(312) 入所の基準(2)
第四百十五:泰子さんの話(312) 入所の基準(2)
手持ちの資金に応じて、介護施設に入所する以外に手はなかろう。資金に余裕があれば(自宅があれば売って)、泰子さんのように上等な処へ入ればよいし、足りなければ見合った経済的な処を選ぶしかない。そのために、お金を貯めておく事は最低限必要だ。
泰子さんを眺めていて思うのは、あまり早期に施設へ入る必要はないが、他人に決めて貰うのではなく、判断力の有る内に本人が決断すべきだ。となれば、元気な内にそうすべきで、特に親しい近所づきあいでも無いなら、自宅に住んでいても施設に住んでいても同じ事なのだから、施設に移り住むのを勧める。泰子さんは、このケースになる。
移り住むもう一つの判断基準は、自分の食事を自分で用意するのが億劫に感じるようになるタイミングだ。自分で作って用意するには、まず材料を選び買い物してこなくてはならないし、食後の後片けもしないといけない。大きなエネルギーが要る。泰子さんはこのケースで、体は案外元気なのに買い物が「めんどくせえ!」と、私に言いだしたからだ。潮時と判断して、私は入所を勧めたのである。
人は歳を取るのだから、先のような日が遅かれ早かれやってくる。自分の始末を自分でつけるにはこれしかないだろう。
つづく




