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◎第十八話: 「清姫と馬の骨」の話

概要:

 結婚と夫婦の挫折。人を愛するのはいい。が、愛し過ぎるのは必ずけしも幸せというのとは違うかもしれないーーー。


第十八話:「清姫と馬の骨」の話


1.ショートカット


 女は百六十五センチで、当時としては背が高い方で、軽くウェーブを掛けた短髪が、良く似合った。笑うと頬にえくぼが穿たれ、白いうなじをすっきり見せる美人である。T社の大阪営業所管内の華で、出入りの販売店の若い男たちからもモーションを掛けられた。が、利口な女は見向きもしなかった。ロクでもないと思ったからだ。


 二十一になった時、同じ社内の二十八のどちらかと言えば、しなびて風采の上がらない男を好きになった。痩せてメガネをかけた神経質な青瓢箪で、何処を押しても「見てくれのいい男」ではない。何時も親しみ難い無愛想な顔をしていたから、そんな変り者を女が選択したアンバランスを、社内のもっと顔の良い男達は怪しんだ:女というのは、何処か不器用な男に惹かれるものらしいーーーと考える以外に、考えようが無かった。


 中でも一番怪しんだのは選択された当の男だったが、本人は青瓢箪なくせに、綺麗な女の子を手に入れたかったから、丁度都合が良かった。それでも途中で女の気が変わってもいけないと思って、後日男が「わけ」を尋ねると、「いい人だと思ったのよ」と女が応えた。本当は女にも良く判ら無かったから、暫く考えてくっ付けた:


「ダサイな処が際立っているーーー、破れた処を何時までも繕ろうとしないみたいな感じよ」 

元々がエンジニアで理詰めが好きだった男は、これを聞いて生涯の教訓を得た:他との差別化は利益に繋がる。


 ロングヘアが主流の中で女のショートカットは新鮮に映り、知的に見えた。男がこれを指摘すると、「ロングは髪が首筋にまつわりついて、うるさくって、厭なの」と、女は如何にもうるさそうに頭を振った。

「なるほどーーー合理的だ」と、男は変人に相応しい妙な納得の仕方をした。自分がもし女だったら同じ理由でそうするに違いない、と効率を重んじる男は同じように考えたからだ。




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