第四百九:泰子さんの話(306) 健康診断(3)
第四百九:泰子さんの話(306) 健康診断(3)
医者は方向を変えた:
「すねの周りに親指と人差し指で輪を作ってみなさい。指が重なったらいけません。栄養不足です。」
「(やってみて)先生、えらいこちゃ、指が重なりますわ」
「そりゃ、いけませんな。痩せすぎです。筋肉が足りない証拠です。脚からフレイルになりますよ。しっかり食べなさい」
「でも、この細いすねで毎日原生林を歩き回った上で、週に数回ジムに通ってます。別段何も異常は起きてませんがーーー」
「うむ、原生林ねえ、ウオーキングですなーーーー」
「本当に(岩岡村の)原生林です。毎日数キロあって、山にはイノシシもキツネもいます。熊は出ませんが、用心の為にカマとノコギリを構えながら歩いています」
「ーーー??」
医者というのは、教わった教科書の範囲しか健康の知識がないもので、融通が利かない職業だ。細いスネを見たら指の輪っかで測って、自動的に直ぐに死ぬと考えるのだ。ところがどっこい、泰子さんのスネなんて私のよりもっと細い。それでも私より元気だ。医者にとっては、80を超えた人間は未知の世界なのだろう。ボランテイアで今後医者に色々教えてやらないといけないな、難儀なものだ。
お仕舞い。




