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第四百五: 泰子さんの話(302)  高齢者施設

第四百五: 泰子さんの話(302)  高齢者施設


 先に一度書いたが、泰子さんは高級な高齢者施設Dに入所する事になり、本日引っ越しを完了した。泰子さんの住居の環境は随分と変化した。昨年の1月に生まれ故郷の岡山市から、私が保有する神戸市のマンションへ転籍して来た。その一年後に今の施設Dに移った。

 今回施設に移ったのは、体調が大きく変化したからではない。一番大きな理由は「ヒロシ、退屈じゃあ!」と何度も言うからだ。


 「退屈」と言うくせに、一緒に食事に出かけたついでに、その近所を一緒に軽く散策しようと誘っても、殆ど興味を示さない。昨年は桜の満開の時期にマンションから徒歩5分の処にある花の名所へ誘っても、「めんどくせえ」で仕舞いだった。そのくせ足腰は丈夫で、デパートへは行きたがる。天邪鬼あまのじゃくな処があるが、私が腹を立てる事はない。だから一緒に食事に出かけても、車でマンションとレントランの距離を往復するだけだ。


 本来退屈さの解決は人に頼むものではなく、自分で解決するしかないものと思う。こんな時、読書が解決の助けになるが、泰子さんは「そんなもの、しんきくせえ!」で片づけるから、困ったものだ。 泰子さんの好みと私の好みは全く違い、一致する事はない。正反対に近い。夫が生きていた時に泰子さんは夫と一緒に何かを楽しむことがあったのか、と不審に思う時がある。この点では、私と私の配偶者の関係とは随分と違う。私たちは大抵なんでも一緒にやったし、楽しんだ: 「間違っても、泰子さんと結婚しなくて良かったなーーー」と思う。


 「退屈じゃあ」というから、デイサービスを暇つぶしの為の施設として一度見学した事があったが、泰子さんの満足の行くものではなかった(私も満足しなかったが)。退屈の解決と泰子さんの今後を考えて(体は充分元気だけれども)今の施設を選んだ。切っ掛けは新聞で魅力的な施設の広告を、タイミング良く見たのが切っ掛けだった:そこにはマージャン教室も俳句教室も将棋もある。スポーツ用に卓球テーブルもあるが、泰子さんには無理だ。それら「退屈まぎれ」の有るのが、選択の決定的要因だった。


 無論決めるにはお金を慎重に計算した上で、決めた。泰子さんは決して貧乏ではないが、かと言って、うなるほどある訳ではないからだ。私が身元保証をした。


つづく

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