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第四百三: 泰子さんの話(300) 私の願い
第四百三: 泰子さんの話(300) 私の願い
私は定年退職年齢を過ぎても仕事を続け、今も働いている。通常の社長業の外にも製品開発の仕事もしている。
同年代の人から見れば羨ましく感じるようで、そういう声をよく聞く。毎日若い社員達に囲まれているせいか、若く見える(=実は「見える」だけ)ともいわれる。同居ではないが、泰子さん(叔母:私の母の妹)を引き受けて間接的に世話をしているのも、私が元気に見える理由の一つのようだ。
そんな風に観られながらも、私の本音は実はそこには無い。本当を言えば: 会社を売却し(無論「引退する」形でもよいが)、そのお金で配偶者と二人で全国を旅したい、あてども無く放浪してみたいと考えている。
けれども現実は当社の社員でもある息子達の人生があるから会社の売却は出来ないし、また配偶者が病気であるから、一緒に旅は出来ない。私は働き続けるしかなく、開発仕事に時間をつかっている。
つづく




