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第三百九十五:泰子さんの話(292)  新しい女(3)

第三百九十五:泰子さんの話(292)  新しい女(3)


 次の朝、二人だけで話をするために別室に呼んだ: 

 女は解雇されると覚悟していたようで、私に対してやや挑発的な感じだった。改めて訊くと、女は靴を履かないと再度わがままを繰り返したのである。


 実は内心で、私も女が(一晩再考しても)考えを改めないかもしれないと事前に予測していた。前日の反抗振りが普通ではないと感じてたからだ。そう予測して、「女への質問」を私は用意していた。それに対する私の結論も既に持っていたのである。その意味で、女の挑発的な感じに対してこっちは冷静であった。


 事務室内で安全靴を履くか履かないかは、客観的に言えば実は些細な事柄である。会社が傾く訳でなし、利益が減る訳でもない。また本人にとっても、履くのはうっとうしい程度であって、常識として「我慢の範囲内」であろうと思う。が、女にすれば単なる社内規律だから規律を手直しして欲しいと思ったのだろう。


 我ままを女が繰り返したから、私が答えた:「2ケ月が過ぎたが、知っての通り試用期間は3ケ月だから君はまだ臨時社員だ。三か月の間に会社は社内規律を教え研修して社員に相応しくなってもらう為の期間だ。言えば、君は社内規律云々を云う資格さえない身分だ。常時安全靴を履くのは決して非常識な会社の要求ではない」

 とはいえ、規律やルールというのは平均点であってグループ内で望ましいものだが、実際には最適とは言えないのを、私は知っている。


 女はそれでも応じなかったから、私は予め用意していた二つの質問を始めた。一つ目は: 「入社して2ケ月とはいえ、君はウチで様々な仕事の体験をした。それらの仕事が好きかどうかを知りたい」と、訊いた。

 そう訊かれた途端、女は涙ぐんだ:「好きです。私の得意を生かせるしーーー」 女の急所を突いたらしい。


つづく

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