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第三百九十四:泰子さんの話(291)  新しい女(2)

第三百九十四:泰子さんの話(291)  新しい女(2)


 数日前の話だが、女に用があって私の机へ呼んだ。距離は3mだがなかなかやって来ず、夕方までには来た気がした。スラリと私の前にたった女を眺めて、この時に初めて気付いた。安全靴を履いてなかったのである。安全靴を履くのは社内の規則である。仕事は事務業務だけでなく、倉庫で実験をする事もあるからだ。確かに、やや重くてうっとうしい靴ではあるが。

 女を眺めてついでに思い出した:女は時々私的なセーター姿で社内ユニフォーム(ダサイなデザインではあるが)も着用していない事があった。前々から気付いていて注意をしようと考えていた矢先でもあった。


 この機会を捕らえて、安全靴の着用と規律を守るように女へ注意した。「はい、分かりました」と、女の恐縮した返事が反って来るものと思っていた。あにはからんや、女は反抗したのである。規律を守らせるのに説明は要らないと思ったが、安全靴は事務所内では確かに不要だが、頻繁に現場に降りるならイチイチの履き替えは能率が悪いから、ずっと履きなさいと再度注意した。


 が、女はガンとして応じなかった。岩みたいである: 先週は(在庫調べで)現場に降りる機会は週に2度しかなかった。降りる都度靴を履き替えれば済む事だ、と屁理屈を述べた。女の主張の強さに、私はやや呆れた。

 けれども例外的に女一人を許したら、他の社員にも全て許さなくてはならなくなる。仕事上私も含めて全員事務所内と現場を往復しているから、事務所内はスリッパで現場へ降りる度に履き替えるのは、能率のいい行動とはいえない。女一人の為に、規律違反を黙認するわけには行かなかった。


 女は屁理屈を並べ立てて口論は10分ほど続き、数人の社員達も聞いていた。彼らの手前もあるし、女一人だけにルール外を認める訳には行かない、単なる「わがまま」だったからだ。とうとう最後に「規則は規則だ。明日の朝まで時間を上げるから、一晩考えて明日の朝ちゃんとした返事をしなさい」と、私は締めくくった。


つづく


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