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第三百九十一:泰子さんの話(288)  おっくうになる(2)

第三百九十一:泰子さんの話(288)  おっくうになる(2)


 たまたま必要があって泰子さんは健康診断を受けた。私も立ち会ったのだが、この時体重が38kgと知り少なからず驚いた。泰子さんは決してチビではないし、背格好からみて40~50kgと私は勝手に思い込んでいたからだ。96ともなると、食べる量が減るうえに胃腸の吸収力も落ちるせいなのだろうか。人生は驚きに満ちていると言うが、体重計に乗れば同じ量だけ悲しみに満ちている。


 常々「神戸は(冬の)風が強い!」と不満ったらしく言っていた:「風に吹かれると体が道の片側に吹き寄せられるようじゃ」

 これを毎回単なるジョークと私は聞き流していた。けれども先の体重減から見て、ジョークどころか100%大真面目な話なのだ。私は泰子さんに対する見方を大いに改めざるをえなくなった。

   

 買い物が出来て食事を自分で作り、泰子さんは自律した生活が出来ているものの、私の見方は少し安易だったようだ。たった一年ではあったが、一年前と今では泰子さんの衰えを私は本気で認知せざるを得なくなった。元気と言っても、矢張り96は96なのだ。泰子さんの歳で数ヶ月は、若い人の数年に当たる。いや今は1ケ月が数年に相当する気がした。


 現状維持は最大の経営リスクという言葉がある。急がなければならないと決断した経営者である私の行動は早い。先の日曜日のお昼に食事をしながら話した: 「ねえ、泰子さん。次の日曜日に上等の高齢者施設の見学に行こうよ。ここから近所の垂水という処にあって、Dって処さ。泰子さんのマンションから車なら20分位だ」


つづく

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