第三百八十九:泰子さんの話(286) 仕事の流儀(5)
第三百八十九:泰子さんの話(286) 仕事の流儀(5)
加えて、こんな事も話した:
先に示した通り、私のメールはR社に対して命令的であった。デザインに付いて確かに私はズブの素人であるけれども、当然ながら「グラフCの重要さや製品全体の値打ち」についてはR社の人より熟知している。R社はR社の範囲でしか物を考えない。当たり前である。
こう言えば分かりよい: 車のデザインが如何に素敵で有名デザイナーが仕事をしたとしても、エンジンがポンコツなら車は売れないのと同じだ。製品があってこそのデザインであって、決してデザインが先にあるわけではない。この基本が分っておれば、いずれがイニシアテイブを取るべきか判断が付くし、M子のR社に頼る姿勢は本末を転倒しているのが分る。
部下を指導する時に、一般の会社ではこんな点を指導される事は少ないだろうが、実は仕事の基本で成果を上げるコツである。これに自ら気付かず、先輩からも適切な指導受けないまま自己流で生涯要領の悪い仕事振りで終わる人は多い。自分の仕事を会社全体の立ち位置で俯瞰出来ないから、そんな人は出世しないし本人も生涯の損だ。
仕事は真面目にコツコツやりさえすればよいのではない。高い位置から俯瞰して自信をもってイニシアテイブを取る姿勢が大切で、それは会社の利益となるし、引いては個人の幸せにも繋がる。出世のチャンスは何処か分からない処にあるのではなくて、日々何時も身近にあるものだ。アイツが出世しオレが出世しないのはえこひいきだと嘆き節する人がいるが、先の話はよいヒントになるだろうと思う。
お仕舞い




