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第三百七十七話:泰子さんの話(275) 三日目の栄養失調の女(6)

第三百七十七話:泰子さんの話(275) 三日目の栄養失調の女(6)


 ウチには理解するのに技術的にかなり高度な知識を求められる新製品もある。勉強に営業員は大変である。英国の製品だがユーザーに技術説明するのも売るのも難しい。そんな知識を、営業員たちに研修で教え込むのが設計のA君の仕事だ。


 先日もそんな研修を行った。4~5名の営業員らに交じって、(ど素人の)女にも受講させた:「今

の君の基礎知識ではA君の説明を理解出来ないかもしれないが、聴講するだけで良いから一緒に勉強しなさい!」


 女の事は兎も角、研修の後で念の為にA君に営業員たちの理解の程度を訊いた。今後売って貰わないと困るからだ。彼の返事は、「ちゃんと理解出来たのは、多分あの女一人だけです」。内心不審に思って、後で女へこっそり確かめたら「よく分かりましたよ」と応えたから、ますます不審に感じた。


 そう言えば、女子工員も多数使っている下請けのF鉄工所の社長が、私へこんな事を言った事がある:「新しいコンピューター制御の機械を入れたら、二十代の女は直ぐにマスターして使いこなす。が、ベテランの職工(中年以上の男たち)となると、なかなかそうは行かない」 この事かと私は思った。


 面接時に「私はコミュニケーションを取るのが上手です・誰とでも仲良くなれる」と言っていた。これは覚えていた。入社して半月ばかり、女は明らかに社員全員に好かれている。多分私一人が、故意に女から距離を置いて接している。むしろほったらかしだが、考えがあっての事だ。しかし私が女を好いているのを、何故か女本人は知っているようだ。鋭い勘だ。


 私は仕事以外に女と余分な話を一切した事が無く、むしろよそよそしい。が、女は自分が会社から「大切な人間」として扱われているのを自覚している風だ。「厳しくされる」のは、大切にされている証拠と考えている。しかし、そう考えるならーーー、賢い。


つづく


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