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第三百七十二話:泰子さんの話(270) 三日目の栄養失調の女

第三百七十二話:泰子さんの話(270) 三日目の栄養失調の女


 29の女が入社して初日二日間は、いわゆるオリエンテーションとして係の者が会社の紹介をした。取扱い製品や仕入れ先などの概要の説明であった。三日目を私が担当した:「そのロングの髪は仕事をする体勢ではないから、カットしないなら後ろへ束ねるなりアップにするなりしてまとめなさい」と注意を与えた。女は副作用で私をにらんだ。


 続いて凸凹した立体構造の爪のマニキュアへ私が眼を落した時、視線の先を追っかけた女がすかさず先手を打った:「これって、絶対に剥がれないんです、ホラこすって見てよ!」 

 入社したての女を、爪と言えども私が肉体をこする事はありえないし、煎じて飲むことも無い。私はウンともスンとも、うなづきもしなかった。更に、12月の寒い折でもあり脱がせる訳には行かなかったが、入れ墨は無さそうであった。


 午前中は手先の訓練の為に、DMで50冊ばかりカタログを郵送させた。

 午後から、小学生の分数を教えた:1/3の意味を訊ねたら女は「三つに分けた一つ分です」と曖昧な顔を作って不安気に応えたから、それは間違いだと指導した。ウチの会社では正しくは「1ワル3の意味で、だから0.33333」の意味だと教えた。


 引き続いて中学生の一次方程式の解法を教えた。更に進み、高校生のニュートンの運動方程式「F=mα」と、大学生の加速度の概念と、重量と質量の違いを講義した。講義の後で「何か質問はないか」と訊いたら、「ありません!」と応えた。質問がないなら、教えた事全部を「今日中に覚えよ!」と命じた。ウチは便利な会社で、2時間で大学まで卒業出来るのである。


つづく


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