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「子持昆布」の話

64.「子持昆布」の話


 話が変わるが、私が親しくしている「知り合い」の彼女は三十八で、斜め後ろから眺めるとなかなかの美形だから、目の保養にプロフィールを少し紹介しよう:


 介護の仕事をしていて、目下介護福祉士の資格を取るべく勉強している。バレーボールが趣味で背はスラリと私より三センチも高いから、お姉さんみたいだ。近年はやりのバツイチで、中三の一人娘がいるから、「三十八 バツイチ子持ち昆布」という長いあだ名を付けやった。略して「子持ち昆布」。


 地区のママさんバレーのキャプテンで、黒いシマシマのタイツをはいている。お尻は丸みがあって適切に出ているから、ワクワクして震いつきたくなる。触ったら、触られた本人よりも触った方がドッキーンとなるが、それ位の事で何処かのシマウマみたいに後脚で蹴ったり、けたたましくいなないたりはしない。


 さて、先の「アカンタレ」の長い話を、「子持ち昆布」へ聞かせた。感動の涙にむせぶかと思いきや、明るく愉快な女で、話を聞いてカンラ・カンラと笑い、こんな話になった:


  *


「女の子は一年生の時から山道を歩いていたのねーーー」

「小学一年生での山道は、怖かったろうなーーー」

「いいえ、ちっとも怖くはなかったわ」

「ーーーー?」


「彼女は生まれた時、見回したら、目の前にあったのは沢山の山の緑と木立だったわ。丁度町の子が気が付いて近所を見回したら、他人の家と塀だらけというのと同じよ。木立と緑と細い道と、木々の匂いは、彼女の全世界だったわ」

「なるほどーーー確かに、そう言われりゃ、そうだよな」


「だから、自分の庭みたいなもので山なんて少しも怖くないのよ。山道に時々現れる蛇なんて首に巻きつければ、夏なんかひんやりして涼しいわ。自分の住んでいる密林を、不幸な場所だとか怖い場所とは思わない。女ターザンよ、キッキッ、キャホー!」

「アハハ。じゃ、小学校入学の時は、女ターザン、人間だらけの町へ初めて進出ーーーって感じだったのかな?」


「むしろ、建て込んだ家や人間だらけの町の方がもっと、彼女には恐ろしかったわ。生活環境が全然違うんだもの。おとなしく無口だった。他人とペチャクチャお喋りするのに慣れてなかったのよーーー」


「な~るほどーーー。じゃ、僕は野生の女ターザンに出逢った訳になるのかな?」

「火星人が、バクテリアだらけの地球人に出逢ったみたいなものよ」

「バクテリアだってーーーー?」

「だって、貴方がそう言ったじゃないの!? 小学校は細菌とバクテリアだらけだ、って」

「うむ、確かにーーー僕は直ぐに風をひいていた」



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