ああ、神様!
55.ああ、神様!
かすかな期待を持って、屋上から二階の喫茶室へ降りた。既に半世紀以上が過ぎて時代が違うから、背の高かった小二の「女の子」がそこに居る訳はないのだがーーー。
喫茶室はニ十人程が入れる程広く、景観を楽しめるように殆ど全部の壁が透明なアクリル張りであった。 三~四人の客がいた。 コーヒーを飲みながら、何かしきりにノートに横文字を書き付けている若い外国人も一人いた。
注文取りの高校生のアルバイトらしい女の子が二人いて、一人にコーヒーを頼んだ。何種類かランクがあったが、そうしなければ昔の彼女に対して悪いような気がして、価格の一番高いブルーマウンテンを奮発した。コーヒーを持って来た時に尋ねてみた:
「ここは景色がいいね。この喫茶店は、ずっと前からここにあるのかい? 何年前に開店したんだい?」
「さあーーー?」
「店のマスターは、幾つくらいの歳の人なの?」一番肝心な質問だ。
「ーーー?」
話が伝わったとみえる。奥から押し出しの良さそうな、70年配かと見えるお婆さんが体をゆすりながら出て来た。ヒキガエルのように横幅の大きな女である。「ああ、神様ーーー」流石にギョッとなった:




