死角
49.死角
けれども、何か釈然としない。数式の中に解けない固い部分がある気がした:「見晴台のある山」が、仮に鉄拐山の背後に隠れて登山口辺りから見えなかったにしても、その山の存在は決して小さなものではない。
昔何度か、茶店を探索する意図があって、山へ入った。その目的で鉄拐山の頂上までも、何度か登った。頂上からなら、背後に隣接するやや低い「見晴台の山」が、眼下に必ず見えていた筈である。けれども、目にしながら、記憶に残らない程私はその山へ注意を払わなかった事になる。これは、理屈としておかしくはないか!?
もう一度車窓から目をやって、この不思議を解決した: 当の白い見晴台はその山の本当の山頂には無くて、何故か「九合目」辺りに位置しているのに、改めて気づいた。しかも「北側斜面」にある!
南に位置する標高の高い鉄拐山の山頂からは、北側に位置するやや低い「見晴台の山」の山頂は、当時私の目にしっかり入っていたに違いない。これは間違いない。けれども、見晴台そのものはその山の北側斜面九合目にあるから、山頂に隠れて「目に入らない」。鉄拐山側から尾根伝いに山道を辿るとしても、その山の頂上に着くぎりぎりまで、見晴台は登山者にずっと目隠しされたままとなる。
小ニの当時、幾ら歩いても茶店の影すら見えなかったのもそうだし、また大人になって本気で探してさえ発見出来なかったのは、茶店が目隠しをされた絶妙な死角に位置しているからだ。昔探した時に、何も無いと見えたやや低い山を、私は探索の対象から無意識に除外していたのだ。第二番目の不思議が解けた。




