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急所を突く

7.急所を突く


 さて、同じマッサージの勉強をするにしても、女達と違って私にはサロンなどを経営する気は無い。けれども、何時ものクセで、そんな女達を経営者の目で眺めてしまう。なお、変に警戒されても困るから、入学当初から、私が会社を経営しているのは内緒にしてある。


 商売をする上で、まず考えるのは需要と供給。街中の、特に女性相手のマッサージサロンの需要がどれほどのものか、ちょっと気になる。広告などでアロママッサージ・アロマセラピー・足裏マッサージ・オイルマッサージ・癒しのリラクゼーション・ツボマッサージなど、これらに類した看板が巷に溢れている。


 更には、「美顔マッサージ」というパーツだけに絞った専門店もあるが、そんな店も繁盛の具合によっては、直ぐにでも我々が練習中のボデイマッサージへと移行可能な訳だ。こう考えると競争相手に事欠かず、サロン経営の実態はいよいよ厳しいのじゃないか、と他人ひと事ながら気に掛かる。


 商売の性質上、過度な経費節減とか値下げ競争はサロン経営にそぐわない。特に女性客は雰囲気を大切にするから、感じの良い店を作るとなると開業資金も大変で、成功への道は多難。それこそ、糸目をつけず金を出してくれる「パトロン・パパさん」の確保が、急務な気がする。やっぱり、金持ち男を確保する為に、「不倫の研究」から先に始めるべきだと、私は思うのだがーーー。


 そんな風に、独立開業に私はネガテイブな気持である。普段からそう思っているせいか、ある日の休憩時間のお茶を飲みながらのおしゃべりで、何気なくこんな感想を漏らした。下座にいたから、上座の女達へ向いた:

「開店を計画する前に、複数の店で自分の体でマッサージを受けて見る事だろうね。繁盛している綺麗な店だけに目が行き勝ちだけれど、流行って無さそうな小振りの店を選んで、事情を調べるのも大事だと思うよ。どうして繁盛しないのか、サービスや技術か、過当競争か、立地か。一~二回通って見れば「店の流行らない理」が判ると思うがねえーーー。


「そんな店は経営者とマッサージ師は兼任だから、褒めるのが大切さ。マッサージを受けながら、こんな風に訊くんだ: 『お宅のマッサージは気持ち良くて素敵だわ、気分がほっとする。夕方や土・日は混み合うんでしょうね? 気持ち良いから、私もお店を持ちたくなるわあ! 親に出資を頼もうかしら?』


「実はこれが誘導尋問でね。 流行ってなさそうな店がこうベタ褒めされたら、業界の動きや苦しい本音を、店主からため息混じりに聴けると思うよ。店を持つのにきっと役立つと思うがなあーーー」


 これを聞くや、周りの「キャハハー」の女達が、シンと静まり返った。居住まいを正して全員が上座から、こっちをしげしげと見下ろした。「干物とばかり思っていたのにーー、案外湿り気がある。ひょっとしたら未だ繁殖力があるかもーー」という色が、女達の顔に浮んでいる。期せずして、私は「キャハハー」族の急所を突いたらしい。

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