★第百六十七話:泰子さんの話(65)「楽しみ第一」(3)
★第百六十七話:泰子さんの話(65)「楽しみ第一」(3)
私は二つ下の弟を(彼が大学一年の時に)自死で失っている。何故死んだろうかと、今でも悲しみとして思う。若い人の自殺率をネットで調べてみた。令和4年度の警察庁の調べと厚生労働省からのデータに拠れば:
・過去約50年間自殺率は10万人あたり15人辺りを上下していて余り大きな変動はない。最近中学生の自殺やタカラジェンヌの自殺があって(めったに起きない事件だから)マスコミが大騒ぎするが、データとしては自殺が激増しているわけではない。
私が関心を持ったのは、むしろ次のデータ(令和4年度)である:
・20歳未満の自殺数は全国で798人で、20~29歳では2483人である。なぜ20歳近辺を境に3倍に激増するかである。(因みに自殺数が最多なのは、50~59歳で4093人である。しかしここで壮年期は、私が述る目的とややズレるので取り上げない。)
青春期半ばから後半の自殺の増加(=それ以前の約3倍)の理由として、識者が様々に言う:大学に入って知識が増えて迷う・進路に迷う・劣等感に悩む・対人関係で悩む・恋に悩むーーー、これらは青春期特有の悩みであると。
「特有」などと如何にも最もらしく映るが、ヤブ医者と同じで病気の原因が判然としない時に「(貴方特有の)体質」ですよ言うのに似ている。だから、「果たして、そうなのか」と私は疑う。気が付かないもっと単純な理由が外にあるのではないか。
高校生時代までは自殺は少ない(=悩みを感じない)が、大学に入ると(私の弟のように)以後自殺が増える。弟の場合は受験勉強という一種の長く続いた緊張感から解放されて、ホッとした時期(一年生)に相当した。言い換えると、突然にして大きな「暇が創出された」時期と重なる。ここにヒントがありそうだ。
つづく




