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★第百五十二話:泰子さんの話(50)「戸籍謄本]

★第百五十二話:泰子さんの話(50)「戸籍謄本]


 泰子さんが私の戸籍謄本を要求したから、渡した。薄々感づいていたが、死後の遺産を全て私に譲る積りらしい。きっちり実行する為に公正証書で遺言書を作るようだ。


 一方で、私は泰子さんの全財産を管理している。日々の生活に必要にして充分な現金をほぼ半年分を目安に本人へ先き渡しする以外は、貸金庫に入れて(仮に)預かっている。だからオレオレ詐欺に引っ掛かっても、手持ちの現金以外に失う恐れない。


 もし他人が見たら、私がお金を勝手に全て取り込んで、泰子さんへお小遣いを渡しているみたに見えるかも知れない。そう見えるだろうと思うが、実際は「二人で相談しながら、一緒にお金を使う」と言うのが一番近い。同時に私は泰子さんへ事あるごとに「(お金を)使え!使え!」と言っているから、人が見たら一層ヘンに見えるだろう。そこには信頼があるから、私達は「簡易的夫婦」みたいなのだ。


 そんな訳で遺産の全額を1円の端まで私は把握している。95の年寄りにしては大きな金額だから、死ぬまでに使い切る事は出来ないと思う。当然使い残しとなって、それを私にのこしたいようだ。


 確かに個人としては大きなお金ではあるが、少なくとも月々億単位の金を動かす会社の経営者の立場から見れば、「はした金」に過ぎない。無論泰子さん本人に、そんな事は言わず、「大きなお金(遺産)、(死後に)有難く頂戴しますよ」と応えている。私にすれば自身が82でもあり、差し当たって使い道も無い訳で、口で述べる程有難がっている訳ではないが。


 泰子さんにすれば、一等地にある安くはないマンションにただで住まわせて貰ったり、何かと気にかけて呉れている甥っ子である私に、感謝の気持ちを伝えたいのだろう。それには「遺産を譲る」以外に手段が無いと考えている風だ。


つづく


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