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★第百二十七話:泰子さんの話(25)「シイタケ」

★第百二十七話:泰子さんの話(25)「シイタケ」


 泰子さんは「神戸の人は親切じゃ、岡山ではそうは行かなかった」と、しきりに言う。


 スーパーのダイエーで買い物をした。一人分だから量は知れている。大きめサイズのシイタケを3ケ買ったそうだ。

「柄を切ってくれと言ったら、切ってくれた」のだそうだ。

 私はシイタケに「柄」などあったかいなと、不審に思った。やがて分かった:笠以外の短い棒状の部分の事だ。シイタケは棒状の部分も含めて全体を食べるものと思っていたから変に感じて、後で自宅で配偶者に訊いた。


「調理の時に、私も柄の部分は切って捨てる。柄の処は焼きめしに入れたり、みそ汁の具に使う事もあるけれどーーー」と教えてくれた。なるほど。

「けれども、お店でシイタケの柄を切って呉れ」と頼む人なんて、聞いた事がない。生まれて初めて聞く」と、配偶者。「生のタケノコを買ったら、全部皮をむいてくれと言うみたいね」と加えた。


 更に配偶者は笑って、「それは神戸の人が親切だと感心するより、お願いするとしても、泰子さんの厚かましさの度が過ぎている」と言った。「放って置いたら、その内に醤油でシイタケを煮てくれと、スーパーで言いそうよ」

 私はまぜ返っした:「その内に、煮てくれたシイタケを、全部食べて呉れとスーパーの人にお願いするかも知れないな。持って帰る手間が省けるから。」


 「度が過ぎた厚かましさ」と聞いて、私は何となくおかしかった。にっくまれっこ世にはばかるとは、これだ。泰子さんが95まで当然長生きする筈で、陰にダイエーの協力があったのだ。


 後日別の日に、ダイエーで今度は「ブロッコリーを買って、柄を全部切って貰った。やっぱり神戸の人は親切じゃあな」と、泰子さんは再度満足げに言った。サービス過剰でダイエーが潰れやしないかと、流石に心配になった。


お仕舞い


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