共通する処が多い
電話で色々とお喋りをした。と言っても毎回話の99%は油を掛けたみたいに口がよく回る泰子さんが一方的にしゃべりまくり、相槌を打ちながらこっちは聞く一方だったから、エネルギーとしては楽なものだ。おしゃべりを通じて、次第に泰子さんの内面を知るようになった:私が知っているお転婆で不良がかったシャキシャキした外面的な雰囲気は、歳が入っても昔通りで、自慢話も相変わらずだった。
けれども、その中で彼女本来の人間性に気付くようになった:むしろ壊れやすく人一倍繊細な神経と優しい心根が潜んであり、時にはそんな心配りが美しいとさえ思った。恥ずかしいからそんな自分を無意識に隠そうとして、外面が他人に対して厳しくなるのかと思う。昔の日本人女性特有の良い意味の保守性を備える一方で、(私の母に引き比べて)しっかりした独立心の強い女性と知った。悪く言うひとは、表面だけの印象に引きずられて本当の姿を知らないのだ。
知るにつれ私の配偶者と共通する処が多く、ある面非常に似かよっていると気づいて驚いている。昔から今も私は配偶者をとても愛しているが、自分の配偶者を愛し、他方で私が若い頃に泰子さんを「慕う気持ち」を持ったのは、実は無意識に「同じ傾向の人間性」を見ていたからか、という気がする。
双方の女性の符合する面の多さをとても不思議に感じつつ、電話を繰り返しながら泰子さんの人間的な魅力に次第に心惹かれるようになった。




