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手堅い会社

 他方で私の会社は工業製品を販売するエンジニアリング商社で地味な会社だし規模は小さかったが、何となく格が高いように見られたようだ。取引先が全国にまたがり超大手ばかりなのと、小さいくせに何か国際取引をするグローバルな会社という印象を与えたせいかと思う。親戚の間で一族の誉れと観られていたようで、叔父さんの会社とは何かしら一線を引かれていた。


 そんな噂は泰子さんの娘(当時50位)からじかに聞いたものだ。この娘は会社の規模が遥かに大きい自分の父親に対するよりも、むしろ私の方を高く評価していた。これを不審に感じていたが、ずっと後年になって何となく理由が分かる気がした。私の商売には形のある「物」のやり取りが存在したので、これが「手堅い会社」と思われたらしい。対して叔父さんの会社は物を売らないので、一種の水商売と見られたようだ。こんな評価は叔父さんには心外な事だったと思うが。

  

 様々な事がありながら、昔懐かしい料亭渓水苑はとっくに姿を消し、そこの経営者の私の祖父母も死に、私の母も京都の叔母さん(お祖父さんの二号さん)もその娘達も死んだ。思い返せば時代の変化は栄枯盛衰、諸行無常の哀愁を感じる。そんな中で一族の間で希望の星として新しく台頭しようとしていたのが、叔父さんの会社と私の会社だったろうか。


 それぞれれの暮らしや人生が時代の波に洗われながら昭和が過ぎ、時代が移り変わった。



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