何たることやサンタルチア
心の隙をうまく突かれた。戻ろうとした時に先の間口の広いB道へ(誘われるようにして)「自動的に」入ったのは、人の心理として自然だった。最大の盲点は、もと来た道以外にもう一本別のB道があるなんて想像すらしなかった事だ。もしB道さえなければ徹底的に探索したろうから、難しくてもA道は必ず再発見出来た筈だった。
更に悪い事に、ヘリポートの周りは屏風のように三十メートル位な同じような高さの木々が取り囲んでいた。もし目印が無ければ、A道への入り口は見上げるような高さの木々の僅かな差異から在りかを測らなければならず、それも難しい問題だった。土地の人なら(例えば前日のブドウ畑のお爺さんなら)当然の感覚でA道を知っていた。だからこそ「さも簡単そう」に教えてくれたが、初めての人にはA道の再発見は、不可能に近い難事だった。
探検の積りで、目印を付けながら前日に迷い込んだB道へ再度途中まで入り込んでみた: 入り口は広かったが、中へ入るとA道よりも一層草深く一層迷いやすい地形になっていて、実際に前日堂々巡りした竹藪も発見した。そして(朽ち果てているが)動物を捉えるらしい複数の巨大なわな(=間口が1.5m□で長さは3m程の箱型の鉄枠製で、中が快適とは見えない)も序に新発見した。まさか熊や狼ではないから、つい近年まではイノシシが沢山いたのだろうか。
林の中に作られた小道はイノシシを捉える為の昔の道で、今はイノシシが駆除され絶滅して、道を歩く人はもう居ないのだろう。あのヘリポートは、昔イノシシの罠を組み立てる拠点だったのかもしれない。
思わぬ魔法を解明して、何たることやサンタルチアであった。一旦こうと「思い込んだ時の錯覚」を人は笑う事は出来まい、怖さを改めて自覚した。




