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◎第九十八話:「大きくしない」話 

◎第九十八話:「大きくしない」話 


 決して負け惜しみで言うのではないが、無暗に会社を大きくしなくても良い、のではないかと最近は考えている。ウチの会社は一時期最大で32名の社員がひしめいていたけれども、現在私を入れて16名である。会社の調子が良くないから減らしたのではなく、退職などで辞めたあとに補充をしなかった結果なので、自然減だ。


 半分に減ったから売上が減ったかというと、そうでもなく横ばいにある。ーーーという事は、半分の人員は初めから無駄だった事の証明になる。経営者として「オレは今まで一体何をやっていたのだろう」と、反省している。


 売り上げが横ばいなら、物価高騰や社員達への昇給などで利益が減ったかというと、そうでもなくむしろ増加している。社員数が減ると人件費が減るから、利益が自動的に増えるのは実は当たり前だ。この論理は常々以前から経理担当の配偶者から指摘されていた事で、しかし私が頑健に反対していたのだが、「ねえ、私が言っていた通りに(社員を減らして利益が上がるように)なったでしょう!」と言われて、こっちはメンツを失った。


 社員達の管理の手間も半分に減ったから、しゃにむに働かなくても、楽して儲かる会社に進化した訳になる。「これは一体誰のお陰か!?」と追加して女に自覚を促され、今度は頭が上がらなくなった。女を尊敬するようになったのはこの頃からだ。


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