職業的責任逃れ
医者は更に続けて、(医者の言葉を少々脚色しているが)「もし私が近代医学のルールに従って週一のセックスを禁じたり、朝食のビフテキを否定したり、並みの三倍の濃度のコーヒーの愛飲を止めさせたり、血糖値を下げる為に毎日夕食後に必ず食べる上等のケーキを止めさせでもしたらーーー、貴方は希望を失いそうですね。直ぐ死ぬのではないでしょうか、それが心配です。今みたいに年中無休で働くなときつく指示でもしたら、新しい暇つぶを探す為に過労になって、三日後に心臓麻痺になるかもしれません」
「確かに赤字の多い数字は、一般的に言えば褒められた数字ではありません。が、今後どう生きるか、どう食べるか、(ひょっとしたら)浮気も含めて何を始めて何を止めるかはご自分で判断なさって下さい」、と医者は職業的責任逃れをした。
実はこう言われると戸惑うものである。けれども、何処となく会社経営と似ている。経営者にとって誰も先生や指導者というのは存在しない。何を止めて何を始めるかは自己の判断で、全てを自分で考えださないといけない。成功も失敗も自己責任。チャレンジのし甲斐があるが、責任の重さも大きい。相談者が居ない事実は、先の「自分で考えなさい」という医者の突き放しの言葉に似ているから、医者の言葉は私に相応しいと思う事にした。




