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貧すれば鈍する

 そのように、経営者として無理をして恰好を付ける為のルールではない。頑張った人を「頑張り損だった」と思わせてはいけないのだ。そうなると、信頼関係を傷つけてしまう。このマイナスは大きい。だから先に言ったように、必ずしも鼻先に人参とは限らず、ある意味では社員の努力を尊重しているのだ。


 公正な評価の賞与が一過性のものではないと知れば、会社を信頼する事になり、多額の割増しで(卵をパックする)Bさんはますます頑張るだろう。報いる事が、会社成長の原動力となる。


 決して名経営者ではないが、筆者がそう疑われた事は何度かある。あんまりぱっとしない名声で満足しているが、こんな時、経営のコツはと訊かれる。訊く大抵の人は、(例えば)公正な「人事評価」のせいだという風に一点豪華主義の答えを欲しがる。けれども成功を支えるのはそんな単純なものではない。どんな場合でも複合的な背景があるものだ。


 例えば、人の気づき難いポイントを指摘すると:中小企業の多くは、ウチを真似て先の「8割の割増し」を刺激策としてやりたいと考えても出来ないものだ。実行出来るだけの資金的な余裕があってこそ実現出来るもので、無ければ無い袖は振れないからだ。

 公正な「人事評価」は社員のやる気を引き出し、会社の業績向上に繋がるのだが、その前に会社の優れた業績の裏付けが無ければ遂行出来ない訳で、卵が先か鶏かの話になる。だから物事は単純ではない。


 因みに、100名以下の中小企業できっちりした人事評価システムを社内に持っている会社は少数派どころか殆どない、と日本経済新聞の記事で読んだ。筆者の感覚では驚き以外にない。


 先の女友達の介護報酬の査定もそうだ。能力の優れた彼女は大いに不満で、こっぴどく会社をこき下ろしているが、メリハリを付けて公正にやりたいとしても、施設の経営は恐らく潤沢に儲かってないから、(やりたくても)実施出来ないのだろうか。けれどもこれでは会社成長の原動力にはならず、よく言うが、貧すれば鈍するというもので、こういう経営になってはいけないと思う。



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