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ヘイヨーさんの短編集

詩の神が降りてくるのを待っていて

 ええい!腹が立つ!まったくもって腹が立つ!

 何がかだって?

 そりゃあ、決まってるじゃないか!

 ミューズだよ!詩神ミューズ!

 小説を書いている者ならば、誰もが1人は飼っている詩の神さ。


 いや、飼っていると言っていいのだろうか?もっと適切な表現があるかもしれない。

 あるいは、飼われているのは僕の方なのか?

 いずれにしても、モノを創っている者ならば、1人に1人ずつはついてるだろう?小説でも、詩でも、音楽でも、マンガでも、なんでも。


 え?

 そんな者は存在しないって?

 そりゃあ、大変だ。だったら、君はどうやって新しい作品を生み出しているんだい?

 今すぐ世界の果てに飛んでいって、どんなコトをしてでも捕まえてくるんだよ!君なりのミューズを!


 ま、とにかく、彼女は食事をする。エサを与えていると言ってもいい。それも大変な大食らい。大食漢さ。彼女の主食は情報。次から次へと新しい情報を食らう。

 もちろん、彼女だって最初からこんなだったわけじゃあない。出会った頃はなんでも食べてくれたさ。好き嫌いを言わずに、与える情報、与える情報、片っ端から食べてくれた。


 それがどうだい?

 いまじゃあ、ワガママ放題、好き嫌い言い放題だよ。

「アレは、駄目」

「このマンガは前に読んだ」

「この映画も、もう何度も見ちゃった」

「新しく始まったアニメ。アレは何?これまでの作品の組み合わせに過ぎないじゃないの。オリジナリティのカケラもありゃしない。もっと斬新な作品を持ってきなさいよ!」

「もっともっと私を喜ばせ、驚かせてちょうだい。そうすれば、新しいアイデアを授けてあげるわ。そうでないなら、アイデアが思いつかないまま、一生そこで苦しんでいるがいいわ!」

 こんな感じだ。

 やれやれ、まったく。どうしたものだろうか…


 食事の話だけじゃあない。

 根本的にワガママなのだ。どうしようもない性格。まったく悪い女に捕まってしまったものだよ…

 でも、そこは惚れた者の弱み。もう長いこと一緒につれそっているのだ。今さら、他の女神に乗り換えるわけにもいかない。仕方がなく、また彼女が望むような作品を探して世界中を飛び回る。

 そうして、どうにかこうにかミューズが満足するような品を献上する。


 ま、その分、見返りはあるよ。

 それも、とんでもなく大きな見返りさ。他の人では決して思いつきもしないとっておきのアイデアを与えてくれたりもする。苦労しただけのかいはあるよね。

 時に、それは切れ味の鋭い剣であったり、新しい魔法だったりもする。とんでもない破壊力を秘めた武器の時もあれば、ふんわりと人をあたたかく包み込むやさしい風を吹かせる魔法だったりもする。

 いずれにしても、苦労して投資しただけの価値はある。


「まるで、女王様と下僕のような関係だな…」

 なんて思うこともある。

 でも、しょうがない。これが僕らの関係さ。

 これからもずっとこの関係が続いていくのだろう。残りの人生、最後まで。

 まったくもって、やれやれだ。だけど、そんな人生が楽しくもあるのさ。

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