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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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九十四話:そして彼らを包む、光

 

 で、俺の言っている事が分からないという顔を見つめながらぼんやりと考える。

 次になんて言おうか、と。




 いやぁ何て言うか…行き当たりバッタリでこんな事を言っちゃったなぁ…

 それに、俺の鑑定が終われば死ぬかも…なんて考えたら急に真面目にやるのも馬鹿馬鹿しいって思えてくるし…


 そもそも俺が生き延びられたのは、彼女のおかげだからなぁ…

 あの時、頭にあの声が響いて体が動いたからこそこうして今いられる訳で。

 あれが意図したものかどうかはとにかく、俺はあれで助かったんだ。

 それで、そうした意志を持っていた本人が今こうして諦めてるなんて…

 見ていて不快なくらいの馬鹿馬鹿しさである。

 どうして人は生かしておいて、自分は死ぬ前の未練を晴らそうとしてるんだろうな?

 …これが終わったらどうせ自分の墓場探しでもやるんだろ?



「人を死ぬ理由に使わないで欲しいな」



 ふとそう考えたらポロっと本音がこぼれた。



「別に、そんな事…」


「そもそも霊力鑑定で生きられる方法も分かると思うしなぁ…」



 彼女が何か言おうとしていたが、気にしない。

 まぁ彼女に生きていて貰いたいってのは完全に俺の我が儘だし?

 それに理由はどうあれ、死ぬつもりの奴なんぞ真面目に扱ってやりたくもない。

 精々、俺が言いたい事を言うとするさ。



「…本当?」


「駄目だったら…町の人達も頼ればいいさ」



 まぁ俺が上手く説明すればきっとイロンの町のみんなも協力してくれるだろう。

 親方に聞けば、そういった事が何か分かるかも知れないし。

 普通の鑑定持ちに協力してもらうのだっていいだろ。

 それに駄目なら駄目で彼女を村に連れて行く口実が出来るって事だしな。

 少なくても彼女は土人形の主で、俺達に友好的だと言えば迎え入れてくれるだろう。

 それならこっちも当初の目的を果たせるって訳だ。



「本当に生きたいって思うなら、もっと貪欲に行かなきゃ駄目だろ」



 その言葉を聞いた彼女はハッとした表情でこちらを見て、躊躇った表情を浮かべる。

 …これがあれだけ俺に鑑定しろと迫ってきた奴の浮かべる顔なんだろうか?

 自分で言いながら随分な言葉だなぁと思うが、これ彼女にはピッタリだろ思うんだけどな。


 そもそも生きられないと覚悟し、せめてでも…と俺に迫ってあれなんだろ?

 相当にその思いは強い、いや強かっただろうと踏んでいるんだが…

 今、目の前に俺という自分の存在を確かめられる可能性を持った奴がいるんだ。

 どうしてもっとそれを広げて確かめたり縋ったり、交渉したりしないんだろうか?

 多重人格じゃないか?という疑問さえ湧いてくるな。



「貪欲に、行こうぜ?」


「そうだけど…」



 もうひと押ししてみたが、やはり躊躇ってるというか…どこか迷ってる感じだ。

 そしてフッと彼女が手を引いたせいでするりと握っていた手が離れる。

 そのまま手を前で重ねて、俯く。

 …貪欲になんて言われても、どうしたらいいかってそんな感じか?

 でも…後一歩って所ではありそうだな。



「…もし、俺が霊力鑑定を使って生きられる方法が分かったとする」


「…うん?」



 ここは手本を一つ見せておこうか?

 なんて適当な事を考えつつ、口を回していく。

 まぁ…まだ向こうは、何を言いたいのか理解してないみたいだけどな。



「だけどそれを俺が言うのも言わないのも、俺の自由な訳だ」


「……」



 ジィ~っと睨むような視線を送られるが、まぁ気にはしないさ。

 悪役っぽい言葉を言ってる自覚はあるしな。



「少なくとも…今こうして生きようとしてない奴に教えてやる気はないなぁ」


「分かった…」


「で、返事は?」


「生きたい」


「…フッ」



 ボソリと呟いたので、軽く鼻で笑ってやる。

 何と言っても前向き感ゼロだしな。

 こう、いやいや言わされてる感が半端じゃない。



「私は生きたい…!」


「もう一声」


「どんなに苦痛が伴っても…どれだけ困難で希望が見えなくても…

 最後の最後…この力の全てが無くなるまで諦めない…から!」


「…おう」



 予想より二声も三声も多かったな。

 こっちが少し戸惑ってしまったじゃないか。

 精々諦めないくらいだろうと思ったけど…

 まぁ多い分にはいいだろ。



「そこまで言うなら、教え甲斐はあるんだけど…」


「だから、お願い」


「まだ分かった訳じゃないし、それに…」


「それに?」


「俺に見返りが無いって言うのはねぇ…」


「…何が言いたいの?」



 少し考えた素振りを見せてから、訝しげな顔でそう尋ねられる。

 もうちょっと提案が出たりとか、察しが良くてもいいと思うんだが…

 まさかこれまでの傾向から、敢えて口に出させるって作戦では無いだろうってのは分かる。

 本当に分からないんだろうな。

 そこまで頭が回るとも到底、思えないし。

 …って口に出さないからって、随分な事を思ってる自分がいるのはさておこう。



「簡単だよ、今…ピンチだろ?」



 洞窟だって目印こそつけてきたものの道も録に覚えられてないし、視界だって最悪だ。

 道に迷わずに帰れる自身がそこまでない。

 それになんたってパラスケヴィの存在だ。

 床から落ちてどこに行ったか分からないアイツと、いつ出くわすかなんて分からない。

 そして出会ったら、今度こそ終わりだ。



「だから協力してくれ、俺が生きる為に…ね?」


「…そういう事」



 事、ここに来てようやく言いたいことが分かったらしい。



「これが、貪欲にって事?」


「俺なりのやり方だけどな」



 やるならもっと強情強欲に行く事も出来たけど、これくらいがお互いにウィンウィンだし…

 何より俺らしいんじゃない?なんて思う。



「で、君の答えは?」



 答えを促すようにそう聞くと、一呼吸の間を空け…彼女が宣言する。



「私が生きる為に力を貸してくれるなら、私もあなたが生きる事に協力する」


「じゃあそれで決まりだな」


「うん」



 俺からもその内容に異論はない。

 力を貸すから力を貸す…それでいいと思う。

 それで、先程引っ込められた手をもう一度つなぎ直すべく手を差し出すと…彼女も手を出して握り返してくる。

 先程は何か思う余裕も無かったが…妙にひんやり冷たく、ざらっとしてるな。

 ってそんな事は今はどうでもいいな。

 少し真面目にやろう、真面目に。



「じゃあ、使うよ?」


「大丈夫なの?」


「休憩もしたし、回復はしたさ」



 内訳は休憩一割、焼き菓子での回復が九割だけどな。

 なんてここに来てかけられる心配を軽く流し、霊力鑑定を使うべく少し意識を集中させる。

 軽く目を閉じて…深呼吸…と。

 あれだけ言ったのに失敗したら目の当てられないからな。

 その上で望む結果が出るかどうかも分からないが…出てくれよ?



 そうやって祈るように集中し、少しずつ研ぎ澄まれる感覚の中で霊力が彼女の握った手を伝い、送られていく。

 こう…今までと違い抵抗っていう抵抗が感じられる限り殆ど無い。

 なんというか…水が乾いた砂に染み込むように混ざり合う感じ?

 それくらいすんなりいっている。

 相応にガリガリと霊力を消費してるんだけどな。

 暫らくそうやって霊力を送り続け…大体今出せる6~7割くらいのSP消費したくらいで結果が出てきた。

 それが…これだ。






[名を失った精霊]

 土を依代に実体化している、その記憶を失った精霊。

 契約を行う事で自然から力を受け取るだけで無く、契約対象との力の受け渡しが出来る。

 記憶の消失で何もかも失っている為、自身の力を十全に操れずその存在は弱体、希薄となっている。

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 脳裏に浮かんできた鑑定結果に思わず顔がにやける。

 なんたって手応えアリだしな。

 ここまで来て手がかり無しは流石に格好が付かない所だった。


 しかし…彼女の正体は精霊だったか…

 本来の力を扱えれば何ら問題がなかったんだろうけど、記憶を無くしていてそれが出来なかったと。

 まぁとにかく…原因が分かった事だし、約束通り教えるとしようか…

 そう思って目を開けると…さっきからお互いに繋いでいる手が光を纏っていた。

 土人形の時よりも強く明るい光だ。

 一応アイツ等の主だし…まぁ光が出るよな。

 とまぁ、ここまでの様子からさして変わらないだろうくらいに思っていたのだが…



「あれ…?」


「…これは?」



 土人形の主の方に吸い込まれて消えるだろうと思っていた霊力がいつまでも消えない。

 それに光までより一層強く、輝きを増し始めた。

 よくは分からないけど…なんかヤバそうだな…

 その直感に従って手を離そうとしても、互いの手は離れない。

 力を掛けている訳ではないはずなのに…それこそくっついた様に…



「くぅ…!」



 色々とやっている内に、遂に光の強さが耐えられなくなる程に強くなってきた。

 …咄嗟に片手で目を覆い隠す。

 そうしていても容赦なく光が目に届くが、やらないよりマシだ。

 …で、それから暫らくの間、輝きを増す光から目を守り続けた。



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