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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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七十五話:次の二人組、やって来る。

 

 それは…夕刻まで資料を漁っていた時の出来事だ。

 厳選した甲斐あってか昼から夕方までにはすっかり資料も読み終わっていた。

 ぶっちゃけると先に漁った日記やら以上の、手がかりになりそうな事は書いてなかった。

 呪いの調査書も、やれあれは違う、コレも違う…とそのくらいだったしな。

 気色悪い日記についてはただ気持ち悪かっただけだ。

 二度目とあって、少し慣れたのか耐性がついたのか一回目よりは気分はマシだが…

 で、今はそれらの情報をまとめて何か手がかりが無いかと考えていたのだが…



「テッシン…ここに居たのか…」


「随分と探しましたよ…」



 昼以降、碌に音さえ無かった場所で響いた声の方向を向く。

 いつから入ってきていたのか…ダダンさんとジーニャさんがここまで来ていた。

 昨日見た時と、そこまで様子は変わってない。

 長旅で少し疲れが見えているくらいか?


 しかし…随分と探した…か。

 そう言えば昼に目印を仕掛けに行こうと思ってたが…そう言えば忘れてたな。

 結果的に見つけてくれたわけだし…いいか。



「ちゃっかり食料も持って行って!全く…」


「ははは、ごめんごめん!」


「そのおかげでそこまで焦る必要もなくなったんだから、むしろ良いだろ?」


「良くないの!」



 こっそりと食料を持っていった事もあって、ジーニャさんは随分な反応だ。

 まぁ怒ってるってよりは心配してるって感じだから大丈夫だろ。



「とりあえずお疲れ様、まぁ休んでよ」


「あぁ、そうさせて貰おう」


「それにしても随分と立派な所が残ってましたね」


「おかげで資料もたくさん手に入ったよ。」



 そう言ってコツコツと日記やら書類を積んである塔を叩く。



「それに一応だけど、呪いの正体は分かった。」



 今日の朝早く、日が昇る前からずっとぶっ通しで作業した成果だ。

 仕事が早いと言われる気がするけど…それでも良い。

 だって元々、二人が来る前に出来ればいいとは思っていたしな。

 これで全部だと断言できないのが残念だけど…

 まぁ呪いの影響を受ける可能性が劇的に低くなったと考えればいい。

 で、俺の発言に二人は目を丸くして…



「「…はい?」」



 綺麗にハモりながらそう言った。

 いや、聞き返されても困るんだけど…

 


「だから、呪いの正体は分かったって!」


「それは…いくらなんでも早いよ!」


「と言うかこれだけの時間で調べられるって…一体どうやったんだ?」


「それもそうだけど…ってかここに来てからの事、洗いざらい話しなさい!」


「その方がいいな、テッシン話してくれ」


「えっ!?いいけどもしかして最初から?」


「勿論!」



 う~ん…面倒だ。

 確かに話さなきゃいけない事は色々とあるけどここに来てからの事全てか…

 いやでも、今ここで例の二人組について話しておけるのはいいな。

 あらかじめこっちで準備しておけば向こうが来た時の対応もしやすいし…



「どうせ何か、無茶な事とかしたんじゃないの?」


「もしお前にばかり負担をかけているとしたら親方にも、お前にも申し訳が立たん

 これは半分以上、町の住人がやるべき問題でもあるんだ」



 二人共、真面目な顔して心配してくる。

 それにしても無茶をした覚えなんて…

 って今思えば結構してるよな…

 歩いてここまで来るの然り、ここでの調査然り…

 今日やった事だってざっくり言うと、本来の目的の達成とその後に起こる事態の回避に平和的解決への布石打ちだし…

 後半は偶然とは言え…ちょっと働きすぎたんじゃね?



「その顔は…なんて顔だ?それ?」


「…思い返せば働き過ぎたなぁ…って顔だけど?」


「やっぱりそうじゃない!全く!」


「はぁ…お前は…」



 うぅ…二人の視線が痛い。



「…分かったよ!話すよ!

 ただそっちの状況も聞かせてね!」


「分かったから!早く!」


「ふむ、経過報告会と言った所か」


「あ、良いねそれ!」



 とまぁそんなこんな、お互いの経過報告が始まった。

 まずは自分の番だ。

 そりゃああれだけ聞きたがってたし、そもそもこうなったのは俺のやった事が気になったからだしな。

 で、とりあえず色々と話した。


 まず…昨日の今頃、異常な疲労を抱えてこの村に着いて、朝に目が覚めたら鑑定が使える様になってた事。

 これについては俺も色々と聞いてみたいことがあったが、二人共鑑定系のアビリティは無いみたいなので、保留だ。 


 で、次に保存食が、まぁまぁ不味かった事。

 おっと、これは関係無いな…


 その後は日記や手記を漁り、おおよその当たりを付けたり。

 そうして井戸水を確認したら、予想通りそれが有毒だったり。

 おそらくそれが呪いの正体であろう事も話したし、それ以外にもあるかもしれないっていう事も言っておいた。

 その可能性は限りなく低いと思うけどさ。

 で、その話をしたら…



「となると…ここに居られるのはそう長くないか…」


「持ってきた食料も一週間くらいが限界ですし」


「足の都合で五日と見るべきだろう」



 との事である。

 まぁ本来はそれまでに呪いの検討して…って感じだったんだろうけど終わったしな。

 時間までは…ってそもそも何で呪いの調査をやってたんだっけ?

 …謎の生き物について捜索してたんだったっけか…?

 すっかり小人の土人形と同一視してたが…そこらへんも調査できたらいいな。



 今後の方針についてもちょくちょく考えつつ話は戻るのだが…

 それからは屋敷の主の日記で気分が悪くなり、気分転換に外に出たら町に来た二人組に出くわした事か。

 ついでに二人組の女の方、サヴァトと話をした事も隠さず話すことにした。


 男の方は相当に暴力的で、メタリカ中央の方でも既に居場所が無いとか。

 サヴァト…女の方は男が町を襲ったのは悪いと思っているそうで、きちんと謝罪がしたいという事とか。

 そもそも、その時は説明出来る状況で無かったから、去るしかなかったとか。

 まぁこれは聞いたわけじゃないが、あながち嘘でもないだろ。

 サヴァト、人に囲まれてたら話せなさそうだし…


 で、各地でその二人組同様、小人の土人形探しを頼まれている人がいるらしいって事とか。

 だけど自分達はそれを探す理由は聞かされてないとか。

 今度きちんと謝罪する為と、理由を説明させる為に事情を知ってる奴を連れてくるとか…

 まぁ…このくらいか?


 その二人組の話をしている最中、二人の表情というか…雰囲気は険しい物だった。

 そもそもその話をし始めた時から心配されたんだけどさ。

 やはり彼らに対しては強い不信感というかそういった物がある。



「今更悪いと思って謝りたいなんて、少し都合がいい気がするな」


「それに何も聞かされてないなんて…流石に納得いきません!」


「そこら辺は…彼らの事情を聞いてからでも良いんじゃない?

 彼らに復讐って言っても、上が悪いっていうならただのトカゲの尻尾切りだし。」



 まぁその彼らも、いつ来るか分からないけどさ。

 そこはあえて言わないでおこう。



「う~ん…」


「それは…そうですけど…」



 とまぁこんな感じで一応理解は出来るけど、納得は出来ないって感じだ。


 それで最後に、二人組が帰った後はずっとここで合流するまで資料を漁ってたって事で俺の報告は終わった。

 おおよそ大体の事はこれで話したんじゃないだろうか?

 忘れていることは…多分無いはず。


 ってなわけで次は二人の報告だ。

 一応向こうでも報告したいことがあったみたいだし…






 …とは言っても移動が殆どだったから、そう多くはないみたいだ。

 その中で話したい事って言うのは…どうやら人員についてだ。



「えっと…じゃあ次に人が来るのが明日って事?」


「あぁ、少し早いが恐らく…そうなる。」


「どうも呼びかけしてきたのが影響してるみたい」


「それでも…早くない?」


「あぁ、だが呪いへの調査などここから人が居なくなってから今まで行われていなかったからな

 それだけ期待もあるっていうのと…利権欲しさだな」


「どうにもテッシン…魔法が効かない人物が居るなら調査なんてすぐに終わるんだろうって先走った村があるみたいで…」


「何を考えてるんだか…」



 全くその通りだ。

 しかも魔法が効かないなんて誰が言ったんだ…

 確かに魔法の効きは悪いし、かき消す事だって出来るけど、一切効かない訳じゃないぞ?

 つーか利権か…

 そういえば屋主の部屋にあったけかな、そんなの。

 忘れない内にしっかり回収しておくか…



「それで来るときに丁度入れ違いになったんです」


「もう暫らく調査に時間が掛かる上に、偵察だと言ったんだが…聞いて無かったしな」


「という訳で下手したら明日の夜にでも来るかもしれないって訳なの」


「下手に追い返す訳にもいかないし、面倒そうだね」


「あぁ…」


「人が来るなら生活する場所も確保しなきゃいけないですし…課題は多いですね」



 ふむ…次から次へと課題がやって来るな。

 今日、やれるだけやったのはかえって良い事だったんじゃないか?

 なんて自分の活躍を少し主張してみる。



「あぁ、であともう一つ…」


「そうそう、忘れるところでした!」


「…ん?」



 人員に関しての報告が終わり、もう何も無いかと思っていたんだけど…まだ何かあるのか?

 と思っていたら、何やら二人共嬉しそうな表情だ。



「聞いてください!遂に…」


「この近辺で謎の生き物の正体がわかったぞ!」


「そうそう!これですよ!これ!」



 声色も何やらとても嬉しそうだ。

 で、ジーニャさんが荷物から小さな箱を取り出す。

 …あれ?なんだろう?

 こんな光景…なんだか昼にも見たような…?



「おそらくこの子で間違いないです!」


「あぁ!偶然進む方向にいたのを、これまた運良く捕まえられたんだ!」



 色々と喋りながらジーニャさんが包みを開くと…案の定中から見覚えのあるものが…

 うん…これ、土人形。

 昼間に見たものと多少サイズが違うけど…見た目に大きな差異は無い…

 しかも生きてるというか、まだ動ける奴だ…

 ってかやはりというか…コイツが謎の生き物の正体なのか…



 う~ん…コメントに困るなぁ…




 


 もうこの話で番外編を含めて八十話…百話まで残り二十話です。

 特に百話に何かあるわけではないですけど…



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