七十四話:続・二人組、やって来る!
さて、この二人の対処だが…
とりあえず…このまま居座られてジーニャさんとダダンさんに鉢合わせするのが一番悪い。
なにせ向こうの心証は全滅覚悟で復讐を果たそうと計画しているくらい最悪だ。
出会い頭に襲いかかっても何ら不思議ではない。
「悪いことは言わないから、ここから去った方が良い」
「はい…いや、…ん」
え~っと、どっちだ?
まぁ良いか、こっちが言いたいことを言えば反応はしてくれるし。
どっちで答えていても良いように話せばいいだけだ。
もしくは聞き流すか…
「…と言うのもじきにここに来るイロンの町の住民が君達を見たら皆、命を掛けた戦いを仕掛けると思う。
それだけ君たちに対して彼らは怒りがあるから」
「…そう」
「…目的は小人の土人形なんでしょ?」
「そう」
「少なくてもここら辺では土人形は一度も見かけてない
良く分からない物を見たってのも、もう少し南だ」
というかこの近辺って南の方にしか村無いし。
まぁ当然の事だよな。
言った通り、俺は呪われた土地に入ってから一度もそれらしき物は見てない。
それ以前も見てはいないが…
加えて呪われた土地近辺…南の村ではこっちに逃げたっていう証言がある。
ただそれだけだ。
「それでも…とここで待って、私刑にされる覚悟で謝るか…それともここいら一帯の住人を皆殺しにする戦いでもする?」
う~ん…自分で言ってなんだが物騒だな。
説得するつもりが脅しになってるな。
あの日記に毒されたか?
いや、でもこれ…事実だし…
「去りたい、けど…」
「けど?」
「…邪魔、コイツが」
「あぁ…うん、なるほどね」
彼女はそこで伸びている男を指差す。
聞いてる限り相当暴力的だもんな。
既にどこにも居場所がない、って感じか?
「…これ、焦ってる。
他にも各地で、探してる人が居るから」
この男の方は手柄を立てたいって事なんだろうか?
「となると…ここ以外にもその小人の土人形が?」
「分からない」
「えっ?」
いや、分からないってなんだよ…
こうして行動してるのって…そういった情報が集まってたからじゃないのか?
「ただ、探せって…」
「それは…何というか…」
「ひどく…面倒だよね」
「あぁ、うん…」
やっぱりそう思ってたのか。
数も分からない、何処にいるのかも分からない。
簡単に使役している物の特徴だけ言われて、その主を探せって言われてもな。
…なんて思っていたら急に目の前の女性…サヴァトって言ったっけ?は深呼吸をし始めた。
「ふぅ…少し落ち着いてきた」
「…そりゃあ良かった」
何かと思ったらそういう事かよ…
そういえばあがり症とか言ってたっけかな。
最初はボソボソと何言ってるか分からなかったが…段々とハッキリ聞き取れるようになってきたしな。
殆ど単語だったような気もするけど。
「それで話を戻すけど…私達で土人形、見つけてるのよね…」
「えっ!?」
急に普通に喋りだしたと思ったらなんだかとんでもない事言い始めた!?
「ちょっと待ってて」
そう言ってサヴァトは馬車の中に入っていく。
あれだろうか…見せてくれるのか?
なんだか物を漁っている音が聞こえる。
というか今思ったんだがこの馬車…骨が繋がれているな。
四足歩行の動物の骨だ。
動力…なんだろうな。
魔法で使役しているとかなんだろうか?
「お待たせ、これこれ」
そんな事を考えていたらいつの間にか戻って来ていた。
で、隣には骨。
人体模型みたいな奴だ。
真理理解によると人骨みたいだが…まぁ良い。
どうせコレも魔法で使役してるんだろう。
で、そいつの両掌に乗せる形で、丁寧に布でくるまれていた人形があった。
体が部位的に欠けたり割れたりしてるけど…元の形をイメージするのに影響はない。
「本当に土で出来てる…」
その見た目は…棒人間よりはマシな絵を描ける人が描いた人間みたいな…感じ?
いや、人型って言った方が正しいだろうか?
少なくとも土偶とか埴輪とか、そんな感じでは無い。
で、大きさは片手のひらサイズより少し大きいくらい。
現に骨の両手で足りるからな。
「こないだ捕まえたんだ
今は乾燥して脆くなってるけど、捕まえた時は動いてたんだよ?」
「へぇ…これが」
原型が想像できる反面、これがどうやって動いていたのか少々イメージしづらい。
この脆さで普通に人型のまま歩いていたとしたら…足が折れるんじゃないか?
生まれて数歩の命になりそうな予感しかしないんだが…
いや、そこは魔法か。
気になるな…調べてみるか…?
「ちょっと触れてみてもいい?」
「うん、良いよ」
一応許可を取ってから土人形に触れる。
さて、霊力を送り込んで…霊力鑑定!
[乾いた土人形]
土を極僅かの水と混ぜて無理やり形作った人形。
デザインも性能も満足のいくものでは無かったようだ。
周囲を探索していたが捕まった為に役目を果たせないと判断され放棄、今はもうただの土塊になっている。
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どうやら…ただの土塊になる前までは探索していたようだな。
周囲って言うのはよく分からないが…恐らく地上の事だろう。
その時に捕まり、役目を果たせず放棄されたと。
となると何らかの手段で、これを操っていた奴が居るって事だよな。
「えっと…どうしたの?」
「あぁ、ごめん
ちょっと鑑定を使わせてもらったんだけど…」
「今のが鑑定?奇妙なやり方だね」
「まぁね、魔力の関係だよ」
「それは…なんだかごめんなさい」
「別に気にしてないからいいよ」
そう言って前髪をくるくると弄る。
そりゃあ暫く人形に触れて動かなかったら、心配され始めるか。
聞いた彼女は申し訳なさそうな顔をしてるけど、俺も先に何かしら言えばよかったな。
まぁ魔力が無いことは絶対に言うつもりは無いが…
と言うか普通の鑑定って見たことないけど…どういう感じなんだろうな?
「で、何か分かった?」
「え~と…今はもう放棄されて土塊になっているって事しか…」
「十分すぎると思うんだけど…」
「そうなの?」
「そうよ」
う~ん…なんだか俺、とんでもない事してる?
普通の鑑定が気になってきたな…
誰か…町にでも鑑定が使える奴がいれば今度聞こう。
「それよりも…」
「ん?」
何だ?まだ何かあるのか?
と思っていたら彼女は自分の連れてきた人骨を指差して聞いてくる。
「あなたさっきからこれに、特に反応ないのね」
「この人骨を?」
「…怖がったりしないの?」
「別に…骨が動いてるだけでしょ?」
俺が骨を指差してそう答えるのを見て、彼女はやや驚いた様子だ。
今現在、俺の心が荒みに荒みきってるって言うのもあるがとりあえず…骨が動いてるなぁくらいにしか感じない。
これが腐臭漂うゾンビや怨嗟の声を漏らす何かだったら有無を言わさず逃げてたけどな。
趣味の悪い日記と合わせて…効果倍増だ。
と言うか…怖がると思うなら連れてくるなって言いたい…
「それにこれ、魔法でしょ?」
「確かに魔法で召喚してるけど…」
「じゃあ尚更大丈夫じゃん」
魔法なら俺の力で何とかなるしな。
召喚なら問題があり次第、戻せるだろうし。
ってかそれよりもこれ、使役している訳じゃなくて召喚したのか。
…具体的に何か違う所があるのか?
「…随分と魔法って所、信用してるね?」
「だって色々と万能でしょ?」
なにせ火を起こしたり、水を生んだり、落雷を落としたり呪いをかけたりと…とにかくなんだって出来る。
おまけに鞭の様にしならせたり、目的通りの効果を他者に働きかけたりと…実行できる魔法って特に使用者にデメリットが無く感じられるんだよな。
使役だってその効果が切れない限り反乱なんて無い訳だろうし?
「とにかく何にでも使える様に見えるんだ、使えない側からすると」
「そういう物…だよねぇ」
どこか納得のいった表情を浮かべて彼女は何度か頷く。
何か心当たりがあるのだろうか?
「うぅ…」
とか話をしていたら男の方が呻き始めた。
こりゃ…そろそろ起きるか?
そう思っていたら、何やらサヴァトの様子がおかしい…
うめき声はサヴァトにも聞こえた訳だが…男の方を見るなりすっげー嫌そうな顔をした。
「どうやらそろそろ時間みたい…」
「時間?」
「コイツが起きたら会話どころじゃ無くなるから」
「そうなのか…」
「うん、そうなの…」
それでよくコイツといて平気なもんだ。
いや、平気じゃないか。
現にさっきはヒステリックだったしな。
それだけストレスが溜まる相手だって事だ。
「本当はここで休みたかったんだけど…」
「…ここいらは呪われた土地って言われてるし、そういう意味でもやめた方がいいよ」
「そうなの!?…ってキミは大丈夫なの?」
なんだか逆に心配されてるな。
様子からしてどうやら呪いの事は知らなさそうだから言ってみたが…どうやら当たりか。
ちょっと悩んだのは、水の事を言うべきか否かだ。
「自分は体質もあって魔法の影響は殆ど受けないし、今は原因究明中だから…」
で、結局言わないことにしたって訳。
やや強引だけど…誤魔化した方がいいだろう。
あながち体質ってのも間違ってないし。
「そう…でもあまり無理はしない方が良いと思うよ?」
「分かってる、心配してくれてありがとう」
「いや、別に…」
そう言ってくるりと後ろを向いてそそくさと馬車に行ってしまう。
で、馬車に向かう途中で何やら骨に指示すると、骨は男を抱えて馬車に戻っていった。
本当に男が寝ている内に帰る気らしい。
「さて、次に来る時はコイツをしっかりと詫びさせられる奴と一緒に来るわ」
「それと小人の土人形を探す理由を知ってる人もね」
「そうね、忘れないようにしないと」
最低限、イロンの町の住民の怒りを鎮めるには、それらが必要不可欠だろう。
俺としてもそれが無いと、納得出来ないしな。
いや…それでイロンの町の住人の怒りが収まらないかもしれない可能性は大きいが…
後は…何かしらの補填だとか条件で親方には何とかして納得して貰いたいな。
自分の命が掛かってそれだけって言うのも…納得出来ない話だろうけど、だからって無理に復讐に走るのもねぇ…
「じゃあね!…えっと…」
「テッシンだ!」
「サヴァトよ!サヴァト・ネクロム!
じゃあねテッシン!また会いましょ!」
彼女はそう言って馬車に繋いでいる四足の骨に指示を出すと、骨は鳴く代わりにカラカラと軽く顎を打ち鳴らした後、進み出す。
で、馬車が走り去っていくのだが…相当速度出てるな!
去っていく様子を見ていたが、本当にあっという間だ。
今の俺が本気で走っても…追いつけないだろう。
まぁそんな事を考えても…意味は無いか。
「ふぅ…」
で、誰も居なくなってから一息、深呼吸だ。
ちょっと話していただけだが、いい気分転換になったな。
それに町に来た奴らの内、少なくとも一人は話せる奴だった。
でもあがり症って話だから、初対面には厳しいみたいだけど…
ってかあれ…あがり症?
元々あがり症がよく分からんから…なんとも言えないけど。
まぁ…別にそれはいいんだ!それは!
結局の所、二人の内一人は謝る気があるって事が分かったし、謝らせる気もあるって事が分かった。
加えて何かしらの、他の手も打つ様子だったし大丈夫だろうと信じたい。
一応俺からも何か説明くらいはしておこうか…
さて、気分転換も終わったことだし、資料の調査でも再開するか!
再び気分を落ち込ませるような物に目を通すのは気が乗らないが…呪いの調査が早く終わると思えば頑張れる。
…って、何か…忘れてるような…?
まぁ良いか!大した事じゃないだろ!
そういう訳で、早速屋敷に引き返し、資料の調査を再開した。
で、忘れていた事を思い出したのはその日の夕方、日が沈む少し前だった。
ご視聴ありがとうございます。
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ちゃんと男の方も名前は決まってます!
ただ、明かされるのはもう少し後で…
でも…勘のいい人なら気づくかも?




