四話:魔法知識
「なるほど、そんな事があったんですか…」
一通りの説明を聞き、そういうラル王女の顔には引きつった笑みが浮かんでいる。
まぁ世界の神様がこんな人格…いや神だから神格だな、をしてたって話したら誰だって信じられないだろうな。
嘘はついてないから信じてもらうしかないけどな。
「そんなわけだから一応この世界の情報を少し貰ってきたって訳だ。」
「なるほど…それで召喚なされてから丸々一日中気を失っていらした訳ですね。」
つまり俺はもう召喚されから二日目になるのか…。
寝たきりで一日目が終わるとは、勿体ないことをしたな。
気疲れしたししょうがないか、女神のせいだが。
「それに、良かったです!」
「何が?」
「もしかしたら…ずっとこのまま寝たきりだったら、って思うと…」
そうか、下手したら何日も寝てる可能性があったわけだ。
何気に恐ろしいことするなあのおちゃらけ女神…
「そっか、ご心配をかけました、ラル王女様。」
改まってそういうと照れたような仕草で顔を綻ばせながら
「いえ、そんな…。私の事は気軽にラルって呼んで下さい。」
…いやそっちかよ。
感謝された事じゃなくて王女様って呼ばれた事に照れるのかよ。
「…それに、召喚されし勇者の一人であるテッシン様なら間違いなく魔の者が世界に災厄を振りまく時に、世界をお救いになるべくお目覚めになると信じておりましたので。」
うわぁ…物凄い信頼のされ方だ…
たかが一人の人間にプレッシャーかけすぎだろ。
世界中の奴らからこんな言葉をかけられたらプレッシャーに潰される自信があるな。
…それよりも何か引っかかる言葉があった気がするが、まずはあれだな。
「じゃあラル…って呼ぶ代わりに俺にも様付けはやめてほしいな。なんならテツって気軽に呼んでくれよ。」
お互いに召喚したものされたものなんだし、いつまでもお互いに様付けで呼び合うのもどうかとおもったのだが…
「はい、じゃあそうしますね!テツ!」
おぉ、かしこまった口調で名前だけ呼び捨てとは、かなり違和感あるな。
「こちらこそよろしく、ラル!」
そんなこんなで少しばかり打ち解けあった後、この世界について知っている事をさらっと教えてもらった。
まずはこの異世界、女神はロスクスーアって言ってたけど、みんな何故かロスクって呼ぶこの世界はやはり魔力があり、魔法で世の中の大部分が成り立ってるといっても過言ではないとの事だ。
ちなみに魔法といっても単純に火を起こしたりってだけじゃなくて、魔力を上手く纏わせて刃物の切れ味を上げたり、身体に纏わせて重い荷物を軽々持ち上げる怪力を扱う事も出来るらしい。
だけど持ち運ぶよりも空間やら重力を魔力で操って…って言うのも可能っちゃ可能らしい。
聞いたところどうやら連想ゲームと大差ないみたいだ。
まずこの世界では物質は魔力から生まれる火、水、風、土の4つの属性の魔力が組み合わさって構成される、と信じられているらしい。
それを提唱してるのは魔術教会って所らしくこの世界のポピュラーな宗教とのこと。
なにやら魔力をより多く持ち、使いこなせる者こそが至高の存在とのことらしい。
なにやら勇者やら革命家やら何やら、この世界での大物は皆例外なくそういった人物らしいからだ。
魔王とかも一応その部類ではあるのではと思ったのだが、どうやら魔力を扱いきれずに自我を侵食されただの何だの適当な理由を付けて滅ぼしたり封印してるらしい。
魔力を上手く扱えない者はその辺りでなにやら風当たりが厳しいらしいとのことだ。
ちなみにそれ以外の学説を提唱した宗教やら学者は皆が皆、この教会の狂信者に魔女狩りの如く駆逐されたらしい。
今では彼らは裏方でひっそりと活動するようになり、教会は下部組織として火術、水術、風術、土術と四つの教会を世界各地に設立し日々切磋琢磨させてるとの事だ。
っと話が脱線し気味に感じるがこの下部の教会が研究で火、水、風、土の四つの属性をいわゆる体系化して人々に広めている…らしい。
だがこの理論、聞いていてなかなか面白かったりする。まず魔力を頂点として四本の分岐をつくりそこにそれぞれ火、水、風、土を置く、それからは連想ゲームのスタートで思いつくものを下に下に書き連ねていくだけだ。
そうしてそれらの要素に対してイメージを固め、魔力によって術として発現させているらしいが、ぶっちゃけイメージがあれば発現するのでは、と思ったのはここだけの話だ。
また複数の要素を相性や割合を考えて混ぜ合わせ、新たな要素を作り出したり出来るらしい。異なる4属性をだと混合術と呼ばれ、同じ属性同士だと派生と呼ばれるとか、ぶっちゃけどうでもいいな、これは。
因みに属性は人それぞれに得意不得意があり、不得意でも、他の属性より扱いこなせなかったりするくらいが一般的であり一切その属性が使えない、とかは稀らしい。
後は治癒術はどの属性にも存在するとか、魔力そのものを扱ういわゆる魔術と呼ばれるものは天性の才能が無いと扱えないとか、でも魔力そのものは身体から常に供給され続けて微量ずつ体外に漏れ出しているやら、そんな話を途中からメイドさんから差し入れられた菓子とお茶を口にしながら頭に叩き込んでいた。
ラルもその事を嬉々として語りつづけ、いつしか菓子もお茶も無くなってしまい、日が紅く染まり窓から入ってくる風が強く、大きくカーテンを揺らし始めた頃合いに
「ラル様、王が異世界から来た勇者を謁見の間に連れてこい、と。」
そう差し入れをくれたメイドと何人かの兵士が入ってきた。
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