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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
序章 魔法のある異世界
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三十一話:話題転換

「まぁ…そんなに不貞腐れるなよ!」


「別に不貞腐れてないわ!ていうかこの話は終わりにしましょ!ね?」


「…そうだね。」

「そうだな、そうしよう。」


宥めるザンギさんと、やや強引に話題転換に持っていったアンナに賛同する形になったけれど…まぁいいか。

聞きたかった事は聞けたのでこれ以上、睨みつけるような視線をこちらに向けてきてくるよりアンナを不機嫌にさせる事もないだろう。

あ、もう一つ聞きたかった事があるな。


「そういえば折角魔物も撃退出来たんだからさ、何か宴とかやったりしないの?」


先の魔物の襲撃では草原で迎え撃ったために村には当然だが被害は出ていない。

他にも怪我人は出ただろうけれど、死傷者なんかは奇跡的に出てないって話も聞いている。

道中にでもそういった話を耳にするかと思っていたのだが、ここに至るまで一切聞いていない。

と言うか何事もなかったかのように普段通りに過ごしている光景はちょっと妙だ。

なので一応聞いてみたのだが…


「良いわね!それ!」


「だな!被害も殆ど無かった事はめでたいしな!」


「折角だしド派手に思い切ってやっちゃいましょうよ!」


「そうだな!豪華な食事に酒に後は…歌に踊りか?」


「集会場所はここ(酒場)にする?」


「いや…村全体だと入りきらないだろ、今回は広場でやろう!」


「となると色んな人に掛け合って色々と出来るわね!」



さっきまでの雰囲気とは一変して…不機嫌だったアンナもそれを宥めていたザンギさんも何処へやら、といった感じだ。

さっきまでの事がまるで茶番だったかのように二人は意気投合して、手馴れた様子で色々と決めていく。

詩人のガブさんに声を掛けよう~とか踊り子のジェシカにも話をつけておく~とか料理は任せろ~とか…ってザンギさんはもう左腕は良くなったんだろうか?

まぁ治癒魔法(ヒール)辺りで治ったんだろうけどさ。


「明日だったらまだウェンの旦那も確実に帰ってこないだろうしきっと大丈夫だろ!」


「そうよね!それに祭りは楽しんだもの勝ちだもの!大丈夫よ!」


ってかもう後先考えずに飲んで騒いで楽しむ事しか考えてないって雰囲気があるんだけど大丈夫…じゃないだろうな、きっと。

あと、ちょっと気になる事を言ってるな…色々と。


「なぁ…ちょっといいか?」


「ん?どうしたの?」


二人の様子はまるで…瞳にはもう宴が盛り上がっている様子(ビジョン)が映されてます、と言わんばかりだ。

そこに水を差すようで非常に申し訳ないけれど、俺にとっては重要な事だしな。


「アンナの父親っていま城に居るんだよな?」


「あぁ、領主交代とか何とか言ってちょっと前から居ないって話はしてるわよね?」


「うん、その事なんだけどさ…」


今現在王都に居て、村から届いた報せが『すぐにでも魔物に襲撃されるかもしれない。』って内容だ。

魔物相手に何も対抗策を講じずに戻ってくるとは到底思えない、王都にいるんだから城から戦力を引っ張って来る、そのために明日は帰ってこれないと踏んでいるんだろう。

…となると考えられる可能性として、だ。


「多分、帰ってくる時に勇者も一緒に村に来るんじゃないかなって思って。」


「「あぁ、なるほど…」」


とりあえず向こうが来る前までには村を発たなきゃいけない、またマルク(勇者)に襲われでもしたらたまらないしな。

それで…二人共言おうとしたことを察してくれたのか、しばし考えて…


「じゃあ…ちょっと忙しくなるが今日中に宴を開いて、明日出発でもいいんじゃないか?」


「そういう事ならテツの送別会も兼ねちゃいましょう!」


「おっ!そうだな!」


「違う!そういう事じゃない!」


「「…えっ!?」」



ちっとも分かってくれてなかった!

いや、一応分かってくれてるけどそういう事じゃないんだよな…

というか宴をやる所から少しは離れて考えてくれよ!


「宴なんか最悪俺が旅立ってからでもいいだろ?」


「えぇ~…だめよ!言いだしっぺなのに。」


「別に強がらなくてもいいんだぞ?」


「いや、強がってないし。」


「それにこの村を救う事に一番に貢献した人がいないってのもおかしいじゃない?」


「そもそもまだ体調は十分に回復してないんだろ?

もう一日くらい休んだ方がいいぜ?」


「確かにそう言われたらそうだけどさ…」


「じゃあ決まりね。」


「決まりだな。」


こう正しいことを言われると反論出来ないのは確かだけど、こう盛大に宴をやる方向に持って行きたがるんだ?

なんだか言いくるめられている気がしてならない。

というかそもそもなんで…


「なんでこうまで盛り上がるのに一切宴の話が出てこなかったんだ?」


途端、時間が止まったかのようにアンナとザンギさんの動きが止まる。

そして錆びてぎこちない動きをする人形のように首をこちらに向けて


「さ、さぁ?ナンデデショウネ?」


「なんでだろ~な?さっぱり分からねぇや!ハハハ!」


二人は盛大な棒読みで答えてくれた。

あからさまに怪しいんだけど…ってそうか。


「いつも盛大にやりすぎて怒られる…とか?」


「まままさかそんな訳無いじゃない!」


「そうだぜ!そんな訳無いじゃないか!」


「そんな事よりも時間も今日中にやるなら時間も無い訳だし、さっさと準備も始めちゃいましょ!」


「お、おう!そうだな!テツも旅の為に色々と購入しなくちゃいけないしな!」


「あ、ちょっと!?」


結局、弾かれるように酒場から出ようとするザンギさん達に引っ張られて連れ出される。


「いやぁ…今日もいい天気だなぁ!」


「そうね!こんな日はいつまでも陽の下にいると熱中症にでもなっちゃうわ!」


「いくら歩けるとは言え激戦の後だ、テツの体調も悪くなっちゃいけねぇ!早めに移動しようか!」


「そうね!そうしましょ!」


…生憎と今現在の空模様は7~8割が雲に覆われていて太陽はぼんやりとその輪郭を雲に写している状態、一言で言うと曇りだ。

ここ数日、カラッと晴れている中で大丈夫だったのに今更この天気で熱中症になんてなるわけがない。

後、早めに移動する方がかえって疲れるんだよな…


なんて思い浮かんだ事を、俺は本日何回も続いてきた中でもダントツに強引すぎる誤魔化しと話題転換に対して言えるはずもなく、息をつく間も無く喋り続けるアンナとザンギさんの後方で腕を引かれながら人知れずこの世界(ロスク)に来てからで一番深いため息をつくのだった。

遂に1万アクセス、2500ユニーク突破しました。

ここまで頑張ってこれたのはみなさんのおかげです。

これからも引き続き頑張っていきますので読んでいただければ幸いです。

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