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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
序章 魔法のある異世界
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三話:覚悟と女神様



「は?異世界?」

思わず、何を言っているんだお前は?と言わんばかりの態度をとってしまったが、目の前の女性は特に気にした様子もなく


「ええ、そうよ。」


にこやかに応える。


「具体的に言うならばそうね、魔法が日常的に使われたり、魔物や妖精に精霊、亜人といった存在がいる異世界よ。」


「魔法?」


「異世界じゃ自在に風を吹かせ、大地を操り、火や水を生み出す力が存在するってことよ。」


「それは面白そうだな。」


「それになによりも、元の世界よりも刺激的だと保証するわよ?」


「ふむ…」


刺激的な世界、確かに話を聞くだけではいつの間にか心の奥底のファンタジーを求める冒険心(オタク心)の欠片が『是が非でも行くべきだ!』と強く主張し始める。


「そういえば…」


ふと、困惑していて聞きそびれていた事があった。


「あなたは一体何者なんだ?」


「私はいうならば異世界の神様って所かしら、あなたに私達の世界を救って貰いたいってわけ。」


「なるほど、女神様だったのか。」


つまりあれだ、世界を代表して女神様が助けてくれと頼んでいるわけか。



「それで…決心はついたかしら?」



頭の中ではそんな世界ならいつ命を落とすか知れないから止めるべきだ、と訴えかけてくる。



「あぁ…」









だけど…







だけれども、一度火がついた心はその程度じゃ止められはしなかった。



「是非行かせてくれ。」



確かに理性が止めたようにこの選択は間違いで、痛みや辛い経験をしたり、生きて帰れる事は無いのかもしれない。

だけど、この一回の選択を断って今まで通り平凡な日常を過ごすとしたらきっと自分は後悔すると、そう確信していた。


そして何よりも


(異世界の神様が頼んでるんだからさ、一般人と違う何かチートじみたものくれたりとか絶対あるじゃん?)


『他人と一味違う』


それは今まで数多くの同年代達をみてきて唯一に近い願望だった。

何をしても必ず自分と同じレベルでそれが出来る者がいる、また僅差で勝つことが出来るとしても上の存在を見せつけられる、何かは出来ても何もかもは出来ないし何も出来ないわけじゃない、だからこそ自身にしかない唯一の事がやりたい。

そんな淡い期待を胸に、目の前にいる女神様に了承したのだ。



そしてそれを聞いた女神様は



「やったぁ〜!ようやく契約が成立したわ!ありがとぉ〜!」









……………………は?



なんか急に口調も変わるし、さっきまでのシリアスというかミステリアスな雰囲気はその面影さえも無いほど軽くなったし。

それよりも聞き逃さなかったぞ、ようやくってなんだようやくって。

まるで何回も断られたみたいな感じじゃないか。

…とゆうか女神様が勢い余って抱きしめてきてるし、そしてめちゃくちゃ力強いし。


……ってヤバい!折れる!身体からミシミシ嫌な音が鳴り始めてる!鯖折りになるって!そしてもがいても抜け出せないし!まずい!冒険が始まる前に人生が終わる!それだけは避けねば!



「くぅ…ぐるぅ……」



遠のきかける意識を何とか繋ぎ、辛うじて言葉をひねる出すと、それに気づいたのか女神様は慌てて回していた腕を下ろし



「ごめんなさい、嬉しくって、つい…」


そう謝ると早口でややお怒り気味に


「でもね!今までここに連れてきた人たちって皆が、み〜んながよ!ロスクスーアの事を根掘り葉掘り聞いてきてね!あ、あなたを送る異世界の名前ね。でさ、自分には役不足〜とか、自分の行く意味が分からない〜とかさ、一人じゃ無理〜とかさぁ何人にも言われたし!あまつさえあなたの様な軽い雰囲気の女性はタイプじゃない〜とかそんなこといわれたら私だって凹むわよ!どうなってるのよ異世界人は…ってあなたに言うことじゃないわね。で、そんなこんなでこういう神々しさとかさ〜雰囲気っていうの?あまり好きじゃなかったけど頑張ってみた訳なのよ!でもそれでも何か理由付けて断る人たちが今まで居たわけだけど、あなたが了承してくれて本当助かったわ!」





うん、何というか…女神様砕けすぎでしょ…


「そんな舞台裏を話しても良いのか?」


ぶっちゃけるにしてももう少し威厳とか残る方がいいんじゃないのか?



「いいのよ、もう契約は済ませた(言質はとった)んだから逃げられないわけだし、これからは私の代わりに働いて、っていっても世界を救うために頑張ってくれれば良いだけだし。」



あぁ…逃げられない訳ね、別に逃げるつもりは欠片もないんだが。



「それよりも…世界を救うのにこのままの状態じゃどう見ても厳しいんだが。」


「なに?あなたを選んだ私の目が間違ってるとでもいうの!?」


「このまま学ランのみで異世界に放り出すなら間違いなくそう思うな。」


「分かってるわよそれくらいは。」



うん、初対面でこういう勧誘したんだろうなきっと、と神らしからぬ印象を与える女神を見てそう思った。



「それにね…他人から力を与えられるんじゃなくて自分で掴み取る方が絶対いいって…お姉さんそう思うなぁ。」


「…確かにその通りだと思うけど、いきなり右も左も分からない世界にいってさ、言葉とか常識とかについては大丈夫なのか?あとあんたはいつ俺の姉になったんだ全く。」


「…それもそうね。」


「それに心配しなくても自分でやると言ったんだ手前、必要以上の力は欲しくないし、努力はするさ。」



そう言うと女神はくすりと笑うと


「流石!そう言ってくれるとお姉さんは嬉しいな!」


「あぁ…はいはい。」


振り回されてるせいかなんか疲れてきたな…

ついそれっぽい言葉も口にしたけど最低限の援助は欲しいな。

まぁ神様と契約なんてそうそう出来る訳でも無いだろうし……これでいいか。


「もう、照れちゃって。」


そう言うと女神は手のひらから小さな光球を出現させる。



「なんだそれ?」


「あなたが欲しがったものよ、あとは私からのプレゼント、契約の証よ。」


そう言うとゆっくりその光が女神の手から離れ、自分の胸の中に吸い込まれて消えた。


「さて、これで契約は成立したわ。」


「意外と簡単に終わるんだな。」


特に痛みも強くなったりした感覚もない。


「そうよ、それじゃあ後は召喚者の所に送るから頑張ってね〜」


「ん…召喚……?」


そんな疑問を浮かべていると突然、頭の中に大量の情報が入ってくる。


「い!?」



途端に強い眠気に襲われてそのまま意識を飲み込んでゆく。



「詳しい……は現地で……………」


意識を手放す直前に女神が何か言っていたが最後まで聞くことは出来なかった。

1/8 誤字修正しました。

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