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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
序章 魔法のある異世界
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二話:文字と言葉と経緯

しばらくは鉄信視点でお楽しみ下さい。

「召喚される勇者様方はこの勇者語を喋ると聞いていたのですが…?」



自分が置かれているこの状況に笑みを浮かべていると、状況を飲み込めずやや困惑気味な王女が訊ねてくる。

というか今なにか引っかかる単語があったな…


「…勇者語?」

「はい、召喚される勇者様方全員が知っていて、召喚者は必ず覚えておかないといけない言葉なのですが…」

「へぇ…」


どうやらただの『日本語』が『勇者の言語』らしいとは凄いな異世界は…

それよりも日本語が勇者語なら勇者達は全員日本人ってことか?

食事にはやはり和食が振る舞われるんだろうか?気になるな。

いや、いかにもな西洋風だから和食をナイフとフォークで、とかだろうか?

…食べにくそうだな



「えと…テッシン様?」


「あぁ…ごめん、続けて」


「本来なら召喚される勇者様には召喚者がこの世界の共通語であるロスク言語と文字をお教えするのですが…」


「これがロスク文字か?」


先ほど読んだ紙をつまみ上げて見せる。

共通語とか共通文字とか異世界は便利だな、中世な雰囲気なのに。


「はい、そうです!」


「ふむふむ…」


「もし文字が分からないなら私がお教えしますよ!」


自分が頑張って覚えた事を活かしたいんです!って感じのオーラを出しながらこちらを見つめてくる。

…ここで選ぶ選択肢は一つだな


「じゃあ…目が覚めたらどう呼べば良かったか教えて欲しいなぁ〜」


「え…あの…それは…」


ちょっと意地悪だったかなぁ、と思いながら顔を赤く染めながらもじもじするのをしばし眺める。


しかし言葉も文字も、文化も違う可能性があるのに「目が覚めたら呼んで欲しい」と書き残してほったらかしというのはどうかと思ったのも事実だからな。



「冗談だよ、とりあえず言葉と文字の心配ないからさ」


「…そうですか。」


しゅん…とラル王女は凹んでしまった。

流石に一生懸命に覚えた事を遠回しに無駄だと言えば凹むよな…

自分でも凹む自信あるし…

というかなんか、泣きそうになってないか?



「まぁ…でもさ、この世界について、細かくは知らないから色々教えてよ。」


とりあえず軽くフォローすると先ほどの今にも泣き出しそうな態度を一変させ


「是非、お教えさせて下さい!」


そう嬉しそうに応えた。

年は自分と大差ないはずだけど、周りに知識人やらが多くて教えられる立場じゃないからこういう機会が嬉しいとかなんだろうな、王女だしな。


そんな感じにラル王女に対する印像を重ねながら一人納得していると、ラル王女がふと思いついたように


「そういえば、なぜテッシン様は色々とこの世界について知っておられるのですか?」


「話すと少し長くなるよ?」


「是非聞きたいです!」

先にこの世界について色々と知りたかったなぁと思いつつもこの世界に来た経緯を話し始めることにした・・・


「じゃあ、まずは…」







まずは自分、仁司鉄信(にじ てっしん)は平凡などこにでもいる男子高校生だ。

スポーツは一通り無難に出来るけれどどれも特に秀でているものはなく、勉強でも得手不得手はなくテストでも悪くない点数を出す、また素行も悪くなく、しっかりと学ランを着こなす一般的なレベルの高校に通う生徒だった。

友人関係も無難に気の合う奴と仲良く、合わない奴とは特に深い付き合いはせずにといったかんじだ。

普段は気の合う相手と漫画や小説、映画、ゲーム、ラノベにドラマやバラエティーなどとにかく色々と話し合う人間関係には不満もこれといって無かった。

ただ普段は友人たちと途中まで一緒に帰るのだが、その日は珍しく一人だった。


(せっかく一人なのだから、ちょっと近道しようか。)


そう思い立ち普段は人がほとんど通らない、日が当たらず少し暗い裏道を通って帰ることにした。


(たまにはこういう、ちょっとした探検気分を味わうのも悪くないかな?)


そう考えたのも束の間、いくら人通りが少ないとはいっても、虫の一匹もいないというのは流石に奇妙に感じていた



「ん…?」


違和感の感じるまま視線を落とすと突然、地面から自分を囲むように強い光が伸びてきた。


「うわっ!?」


とっさに目を閉じて顔を覆い隠すとその直後、一瞬で周囲に流れていた小さな雑音が消失した。

次いで足から伝わる地面の感覚も消え去り、宙に浮いているかのような感覚を身体全体で感じるようになり始めた。


そしてそれから意を決して恐る恐る目を開けるとそこには何とも言えない、どこまでも真っ白な空間が周囲に広がっていた。

上下前後左右全てが全く同じであり、その光景が一様な様は自分がそこに静止しているのか動いているのか、はたまた回っているのかさえ分からない。

更にいつの間にか肩から提げていたバッグやらポケットに入れていた各種小物も消失していて、ただただ困惑していると


「あなた、異世界に興味がある、または行ってみたくはないかしら?」




どこからともなく女性の声が聞こえると、目の前の空間が揺らぎ、そこから簡素なドレスを身に纏った女性が姿をあらわす。

そして見る者を惹きつける、神秘的な雰囲気を振りまきながらこちらに近づいてくると


「あなたが望むなら…この世界とは異なる、いわゆる異世界で私に力を貸して欲しいの。」


真剣な眼差しで彼女はそう語った。

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